あらなみ

一橋桐子の犯罪日記のあらなみのネタバレレビュー・内容・結末

一橋桐子の犯罪日記(2022年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

親類はなく、独り身で天涯孤独の身の桐子。
たった一人の友人でシェアハウスをしていた知子(ともこ)を病で亡くし、この先の人生に絶望してしまう。

住んでいるアパートの家賃も一人で払えず途方にくれていたそんな時、パート先のパチンコ屋の店長・久遠が刑務所上がりだと噂を聞きつけ、刑務所ならば衣食住に困らず美容師の資格も取れると知り、刑務所入りを目指す、ムショ活を始めることに。

しかし万引きしようとしてバイトの女子高生・雪菜に見つかりあえなく失敗。
お金をコピーして偽札を作ろうとするも、失敗。
雪菜に迷惑かけるなと叱られて「独りぼっちでどうしたらいいのかわかんない」と人目も憚らずに泣きに泣く桐子に、こちらも大泣きした。
きっと誰しも訪れるだろう「独りぼっち」の日々。
家族を作ればいいとか、友達作ればいいとかそう思うかも知れないが、それが簡単にできず、それでも独りぼっちは寂しいと、心の底で叫ぶ人はいる。
そういう人に寄り添うドラマだと思った。

闇金の寺田を酔わせて金を奪おうとするも失敗。
結婚詐欺をしようとするも失敗。
雪菜に頼まれて狂言誘拐をしようとするも、失敗。

けれど、一つ失敗をするたびに、お人好しで愚かで、けれど善良な桐子を見守る人が、一人、また一人と増えていくことに、桐子自身が気づいてくれないのが観ていてなんとももどかしい。
桐子は知一直線だから気づいてないかも知れないけれど、桐子を心配して愛してくれる人は少しずつ増えているのよね。

最終話、末期癌に侵されている寺田に嘱託殺人をせがまれるも、痛みに苦しむ寺田を前に救急車を呼び、寺田は一命を食い止める。
様子のおかしい桐子と寺田を心配して、一日中走り回ってくれる雪菜ちゃんや久遠さんがいるんだよなぁ……。
だからこそ、真っ暗な待合室で、ムショ活やめる! っていう桐子のどこか晴れ晴れとした顔にぼろぼろに泣いたし、「これからもシャバで会える」という桐子と雪菜ちゃんの言葉に笑っていいのか泣けばいいのかわからなくなってしまった。

作中何度となく触れられてきた知子の犯した罪は想像以上に壮絶で、言葉がでなかった。
娘さんはどんな思いだっただろう。
そして、娘さんの旦那さんが知子さんに対してあまり良い感情を持ってないのは、多分旦那さんも知ってたからなんだろうなぁと複雑な気持ちになった。

知の眠る瀬戸内海の島へ。
苺大福を墓前いっぱいいっぱいに並べる桐子と雪菜ちゃんがなんだかとっても微笑ましい。
いつか見せたいと知が言っていた大楠木に、ここに住むことを決めた桐子。
娘さんのご厚意で知の生家に暮らし、パチンコ屋で養われた掃除の技術で島の小学校の掃除のおばあちゃんへ転身。
子供も家族もなく、身寄りのなく独りぼっちだった桐子が島の子供達に囲まれて、桐ちゃんって言われて一緒にぴょんぴょんしているのを観て、声を上げて泣いた。
ああ、よかった。
これで桐子はもう独りぼっちなんかじゃないね。

今はSNSもあるから、雪菜ちゃんとも、久遠さんとも寺田さんとも気軽にお話もできる。
知を失って絶望していた桐子はもういないんだなぁと思ったら、安心して声を上げて泣いてしまった。
あらなみ

あらなみ