真一

仮面ライダーBLACK SUNの真一のレビュー・感想・評価

仮面ライダーBLACK SUN(2022年製作のドラマ)
4.6
 この「仮面ライダー」シリーズは、なんと、在日コリアンに対する極右・ネトウヨのヘイト事件をモチーフに、市民レベルでの反レイシズム運動の重要性を訴えた超力作!信じられないかもしれないけれど、本当です。

 あの怪人(カイジン)たちは、人間から言われなき差別を受ける存在として登場する。レイシズムを煽る政権与党、その傘下でヘイトスピーチを撒き散らすレイシスト、それを見て見ぬふりする私たちの姿も描かれている。「仮面ライダーblacksun」は、日本の恥部をあぶり出す前代未聞のヒーロー列伝だ。

 第1話からして圧巻。レイシスト集団に必死に立ち向かう人を見ると「すごい!尊敬します」と応援するけど、決して一緒に戦おうとしない私たちの本性に切り込んでいる。
 
 舞台は日本の中学校。ニューヨークの国連本部で反ヘイト演説をした葵が、帰国して母校に戻ってきた。 あの環境問題運動家のグレタさんをモデルとした女子生徒だ。世界的に有名になった葵の回りにできる黒山の人だかり。先生も同級生も満面に笑み。まるでスター扱いだ。

 その時、レイシスト集団が校門に押し掛けて「怪人は日本から出ていけ!」という非道なヘイトスピーチのシュプレヒコールを繰り返す。こわばった表情で「騒がしいわね」と言って窓を閉める教師。見なかったことにする生徒たち。果敢に抗議に行ったのは、か弱い葵一人だけだった。

 よく描けている。そう、誰もが、拡声器でヘイトスピーチを叫ぶレイシストをみて「触らぬ神に祟りなし」を決め込んでいるのだ。立ち向かう人がいれば、拍手はするけど、自分は関わろうとしない。「差別は嫌い」と言いつつ傍観する大衆。ハンナ・アーレントがいう「悪の凡庸」にまみれたこの社会の実態を、本作品は鮮やかに表現している。

 怪人ヘイトを繰り広げる集団は、驚くべきことに、実在する差別主義団体「在日特権を許さない市民の会(在特会)」をモデルにしている。集団の非道な活動に対する怪人側の抗議運動も、在日の方々や支援者によるカウンター活動を参考に描いた。レイシズムをさりげなく煽って保守票を取り込む堂波総理(ルー大柴)は、なぜか安倍晋三そっくり😂そしてロケ地は大阪・生野のコリアンタウンという力の入れようだ。

 物語は、人間の下僕に成り下がっていた主人公・光太郎(仮面ライダーblacksun、西島秀俊)の目覚めと葛藤を中心に展開する。差別に耐えかねて武装蜂起を叫ぶ強硬派と、政治的に折り合いをつけるべきだと主張する協調派に分裂する怪人社会。そして、分断につけこむ保守政権。光太郎の戦いが始まるー。

出演者はほかに濱田岳、吉田羊ら。非常にクセがある内容で、評価は割れると思いますが、それでもお勧めしたい作品です。
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