茶一郎

FARGO/ファーゴ 始まりの殺人の茶一郎のレビュー・感想・評価

FARGO/ファーゴ 始まりの殺人(2016年製作のドラマ)
4.7
【記録】
 前シーズンから時代をさかのぼり、全く別のお話に。シーズン1が視聴者が感情移入しやすいキャラクター(保安官)を中心に回る、コーエン兄弟作品で言う『ファーゴ』、『ノーカントリー』、『トゥルー・グリット』系譜のクライム劇だとすると、今シーズンはコーエン兄弟のその他作品の系譜、特に感情移入しやすいキャラが不在の不条理クライム・コメディという毛色が強くなった印象。
 またフィクションラインを越えた「悪魔」がいたシーズン1と異なり、基本的にリアリティが現実世界と同様でギャングの抗争モノと犯罪に巻き込まれた夫婦の物語を描く、単純化すると『ブラッド・シンプル』と『ミラーズ・クロッシング』を足して二で割った感じ。
 特に1979年という時代設定が絶妙で、ベトナム戦争とウォーターゲート事件の記憶がまだ新しい時期、政府も国も何も信じられない傷ついた登場人物と、女性解放を求める女性キャラクターが印象的。女性を蔑視したり、マイノリティを差別したりした者が軒並み不条理に殺されていくのも、ブラックコメディとして清々しい面白さだった。
茶一郎

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