とーり

FARGO/ファーゴ 始まりの殺人のとーりのレビュー・感想・評価

FARGO/ファーゴ 始まりの殺人(2016年製作のドラマ)
5.0
THIS IS A TRUE STORY. "There's the message."《戦争》と《家族》コーエン兄弟の名作を彷彿とさせながらあくまでオリジナリティーをもってして『ファーゴ』という言葉自体をブランド化させ『ツインピークス』のような高みにまで押し上げしまった。燃えるような犯罪とユーモアとドラマのバランス、素晴らしい。オリジナル映画同様"小さな"事故・事件が裏社会と家庭もある普通の人々をごくごく自然に、けど不条理に結び付けていく。ほころびだらけ。そんな風に夢も悩みもある血の通った人間らしく、よく描けた多数の深いキャラクター達(パトリック・ウィルソン格好よすぎ!)が複雑なドラマを唯一無二に織り上げていく様はお見事でぐうの音も出ないってやつ。うまく捌かれて三つ四つ(エド&ペギー、警察&保安官、ゲアハルト家、カンザスシティ)のドラマが並行して進んでいくギャングものであり西部劇でもある。そこにSF要素すら絡めるという天才的発想にはただただ御見逸れしました。第二次世界大戦からベトナム戦争へと、地域性も時代性も見事にプロットに絡められていて小ネタもほいほい出てきて満載。暴力描写はあっけらかんとしていてセリフ回しは小粋。人間の愚かしさを出汁にした上で最大限困らせている。ボタンの掛け違いとスパイラルは止まらない。そしてエドの戦闘力の高さとキルスティン・ダンストが絶妙にムカつき神経に障るが、前シーズンに続き保安官役は株を上げる。そんな風にべらぼうによく書けた脚本は勿論、演技面も演出面も半端じゃなく巧妙でついつい見入ってしまう圧倒的クオリティーの高さに唸る。ドキドキハラハラワクワクヒヤヒヤゾクゾク。
アメリカの広大なる大地、新たなフロンティア西部として北部、そこに込められているのは人間いずれ《死ぬ》という盛者必衰の理。まさしく現存する最良のドラマとでも言っておこうか。一流の映画にも匹敵するし、テレビやドラマといった表現方法すら一段二段と上げていくようなほど悔しいくらいセンスの塊。理屈のいらないほどの面白さは素直に日本ドラマには滅多にない「続きが気になる」という気持ち。いつまでも見ていられるし、いつまでもこの世界に浸っていたいと思う。ニクソンの言う「誇り高き平和」。カンザスシティから来ているのはバスルーム兄弟ではなくキッチン兄弟。物事の善悪もモラルも以前のようにはもう分からない、まるで『ノーカントリー』のトミーリーがそうであったように。そして最後には変わりつつある時代の変化=憂いを描きながらも『赤ちゃん泥棒』級に感動させてくれる。前のシーズン1がめちゃくちゃ面白すぎたから、あれを越えるのは至難の技だろうななんて思っていたけど、それすらこの前では杞憂でした。全く違う舞台設定でもオリジナルが持っていたスピリットやメッセージを見失っていないどころか、より強固にするしている。おやすみ世界の皆さん。

「実際の事件は1979年ミネソタで起こった。生存者の希望で人名は変えてある。死者への敬意を込めてその他は忠実に描いた」
TOMATOMETER100%