tak

犬神家の一族のtakのレビュー・感想・評価

犬神家の一族(2023年製作のドラマ)
3.7
幾度も映画化、ドラマ化されている横溝正史作品。今回の「犬神家の一族」は、吉岡秀隆の金田一耕助。「家賃も溜めてるんだから行っておいで」と家主に促されて依頼先へと向かう金田一は、カラカラと笑う飄々としたキャラクター。困った顔しかしない石坂浩二、険しい表情の古谷一行とは違う。クールな長谷川博己とも、チャラい加藤シゲアキとも違うw。見る人それぞれの金田一耕助像があるから、それぞれの違和感があるだろう。でもストーリーが進んで深刻な表情で頭を掻く吉岡秀隆は、個人的には好印象。

繰り返し映像化されるため、キャスティングばかりが注目を浴びがち。今回も有名どころを揃えているが、松子を演ずる大竹しのぶの凄みに圧倒される。松子役は高峰三枝子も富司純子も素晴らしい。けれど淡々と推理を聞き、真実を知っても落ち着いていた二人と違って、本作の大竹しのぶは佐清に向かって絶叫する。父佐兵衛に向けられた怨念の深さを視聴者は思い知らされる。凄い。

だが今回のNHK版の見どころは、なかなか挑戦的な改変部分だ。事件は解決するが、ふと思い立った金田一耕助は再び関係者への面会を求める。なんとも陰鬱として歯切れの悪い結末。灰色のラストシーンが残すなんとも言えない余韻は、横溝正史ものを見慣れた僕らに「そう考えたことはなかったな」と思わせる。
「金田一さん、あなた病気です」
刺さるひと言と突き放される結末にゾクっとする。面白い。凝ったビジュアルも含めて、見応えのある前後編。
tak

tak