岡田拓朗

義母と娘のブルースの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

義母と娘のブルース(2018年製作のドラマ)
4.3
義母と娘のブルース

奇跡のスパイラル。
個人的には2018年7月ベストのドラマで、わりとロス案件でした。笑

初めはどうかなーと思ってたけど、話が進むにつれて様々な奇跡による伏線の回収とともに、愛おしさを増幅させていく登場人物たち。
そこにここまでの大切なことやメッセージ性までもを入れ込む展開に、毎回涙の連続。

契約結婚(ビジネス)から始まった家族は、お互いをちゃんと尊重して受け入れ合い、愛を伝え続けることで確かな温かい家族となっていく第1章。

みゆきちゃんの物心がついていて、亡くなった母が本当に好きだったからこそ、なかなか受け入れられない新しい母亜希子さん。
かたやでビジネスとしてその家族に入っていった亜希子さんは、初めはただ業務を全うすることにしか頭が働いてなく、でも根は優しくて素敵な人だと見抜いている陽一さんは、だからこそ亜希子さんを家族に引き入れて、子供との向き合い方や人と関わる上での大切なことを伝えていき、確かに行動や表情が変わっていく亜希子さん。

徐々に3人が愛の溢れた温かい家族になっていき、とても愛おしかった。
ここからどうなるのか、と思いきや陽一さんが亡くなることで第1章が閉幕。

第2章ではみゆきが高校生になり、亜希子さんにとても懐いていた。

それでも亜希子さんから育ったみゆきは亜希子さんとは真反対な雰囲気で、めっちゃ父親似。
亜希子さんを変えたあの温かみのある人柄、性格が滲み出てて、ベースが父親と変わらないのがとてもよい。

それでも子は尊敬する親を真似するように仕草が似てくる。
それをいいことに子を自分に似せようとせず、根本的なよい部分は変えないようにちゃんと育っている。
大きくなった今を育つ過程を飛ばして描く意味は、この今を見せることでどんな育て方を亜希子さんがしてきたのかをイメージさせるためなのかなと思った。

さらに、会社(ビジネス)も学校(教育)も家族(育児)も…あらゆる集合体において最大の成果を出す大切な取り組みやことや考え方って、そこまで変わらなくて意外と普遍的なんだよってことも裏メッセージとしてあるような感じがしてる。
それが個性を殺さず、活かすこと。

比較するのはあれですが、是枝監督作品の「そして父になる」では、対極する父親像が描かれていて、片方は子どもの本質を見ずに、自分がなって欲しい姿こそが正しさだという思い込みから、ただそれを押しつける。
その育て方が誤ちだったと気づいて、育て方を変える決意をして終わる。
変えた育て方のイメージがぎぼむす。
(押しつけの先に好きになったらいいけど、嫌々続けるとなったらほぼ確実に成功するまでは続かない。
仮に成功しても幸せを感じにくいから結果不幸なわけで、一番絶望的なのは押しつけられたことだけが自分の世界になって、それを失った瞬間何も残らなくなることだと思う。)

また、当初出てきていた無意味だと思っていた登場人物が2章で意味が出てきて、みゆきにとっての父のような存在が、次は亜希子さんに代わっていて、麦田が亜希子さんのことが好きなのに気づいてちょっと嫉妬してる。
でも1章のときとは違って、嫉妬で終わらずに亜希子さんのことに幸せになって欲しいと後押し、確かに成長している。
こんな展開、誰が想像できただろう。

そして、大樹とみゆきが小学生→高校生で、普通に行けばむしろ大樹がみゆきのようになり、みゆきが大樹のようになっていくように1章では思った。
日常の積み重ねの中で、触れることや関わる人によってその人がアップデートされていき、今に至ってる。
それでも根本的に変わらない部分があることがよくわかる。

やりたいことのために努力してる大樹はその過程で得た強みで麦田を助ける。
まだやりたいことは見つかってないけど、毎日を楽しみ楽しむことなら右に出る者がいないみゆきは、その楽しむ心を活かして役立つ提案をし、それをちゃんと亜希子さんは受け入れ最高な形で再開店日を迎える。

その再開店日は実は2つの親子のリスタートでもあって、新たな恋と嫉妬のスタートでもある。
8話という終盤でどんでん返しなスタートに溢れる展開が凄い。

全てが奇跡に帰着してくる展開に、軌跡を並べるような空想。
1章から続く物語は、終盤に来て全てが意味を成すように繋がっていく。
実は軌跡は奇跡の連続でできている。
そして何より、血の繋がりだけが家族たり得ることの全てではないことを説いたり問う作品が最近多くて、これは本当によい傾向だと思うんです。
今作もそれが顕著で、結果的にみゆきちゃんが朗らかに周りを明るく照らすめっちゃいい子に育ってるのがとても微笑ましい。
脚本の森下佳子さんがこのドラマでずっと主張してるのが、そこと日常がそもそも奇跡の積み重ねであること。
原作あるからこそだとは思うけど、脚本が本当にすごい!

そんな色んなことが一作に詰まっていて、出てくる全ての人がとても愛おしく、毎回涙を流すほどの感動を与えてくれた。
岡田拓朗

岡田拓朗