ろ

よくおごってくれる綺麗なお姉さんのろのレビュー・感想・評価

5.0

「敷かれたレールを進むのが幸せとは限らない」

スクリーンで観る「フランシス・ハ」
「雨に唄えば」を観ながらつまむピザとワイン。
赤い傘で行くのを上から、ソールライターのように映す・・・

邦題からイメージしたドラマと全然違った、ものすごく映画的だった。
過去のトラウマ、主人公を奪い合う二人の男、スローモーションとアップの多用・・・といった韓国恋愛ドラマの王道を見事に裏切る、新鮮でオシャレなドラマだった。

ただ黙って、ひたすら黙って、ちびちびとお酒を飲む。
それだけで登場人物たちの葛藤が痛いほど伝わる。
そこへ、ビルとビルの間から差す美しい朝焼けが挿入されたりする。
もうこれは小津かな、小津さんの映画かな。

さらに、母親の過干渉や職場のパワハラ問題も絡んできて、どうやって折り合いをつけていくか、考えさせられる。
「過干渉は一種の暴力だ」と責める弟も、「親は怖がりだ。だから安心な道を勧める。冒険を選ぶのは心配で見ていられないんだ」と慰めるお父さんもいい。そうなの、これお父さんがめちゃくちゃ素敵なドラマなの。

マンションの手すり越しに、インターホンを押そうか迷っている主人公を映すカットとか、とにかく映像に魅せられちゃったな。
音楽もレトロで粋でカッコよくて、作り手のこだわりとプライドが端々に散りばめられたドラマだった。
ろ