最初から最後まで暗くて、視聴率が心配だったけど、「考え続けることの大切さ」が一貫して描かれていて、私は好きだった。
今のテレビ界には「深く考えなくてもいい」「楽しければそれでいい」という風潮があるけれど、それに対するアンチテーゼだったように思う。
物語は、官僚である御上が私立高校・麟徳学園の教師として生徒たちと向き合いながら、麟徳学園・永田町・霞ヶ関の不正を暴いていくというもの。
永田町や霞ヶ関は、ドラマではしばしば私利私欲にまみれた不正の温床として描かれがちだけれど、御上や槙野のように、本気で教育改革に取り組む優秀な人材も確かにいるというころを忘れたくない。そして優秀で志のある人が「官僚になりたい」と思えるように、今の過酷な労働環境(長時間労働・低賃金)を変えるべき。
本作のメインテーマは「パーソナル・イズ・ポリティカル=個人的なことは政治的なこと」。
毎話、生徒たちの個人的な問題(報道倫理、学習指導要領、ディベート、投資、相対的貧困、生理の貧困、ヤングケアラー、裏口入学)が取り上げられ、それに対して御上先生が優しく見守りながら、クラス全体で考え、議論し、行動していく。
正解のない問いに向き合いながら、実際に行動に移していく様子、生徒の心情の変化が丁寧に描かれていて、面白かった。
最終話、卒業式の後に御上先生が語った言葉が、このドラマが伝えたかったメッセージの核心だったと思う。「考える力」とは、単なる論理的思考ではなく、答えのない問いに向き合い続ける力。それはとても苦しいけれど、同時にとても大切なこと。
ストーリーも伏線がどんどん回収されていって見応えがあった。理事長が単なる悪役ではなく、「教育の理想」を追い求めすぎた結果として組織の不正に飲み込まれてしまうという、皮肉な結末も良かった。
もちろん、生徒があまりにも優秀すぎたり、受験前なのに政治活動に力を入れすぎていたり、機密情報を生徒に共有しすぎていたりと、ツッコミどころは多々ある。でも、それは本質ではなくて、社会に一石を投じることこそが、この作品の意義だったと思う。
神崎くんが千木良さんのことを考えながら吐きそうになりながら記事を書いたシーンが名場面。「報道とは何か」も一大テーマでした。
キャストとしては「ゆとりですがなにか」の三人(松坂桃李さん、岡田将生さん、吉岡里帆さん)が再び集結してくれたのが嬉しかった。