長内那由多

POSE/ポーズ シーズン2の長内那由多のレビュー・感想・評価

POSE/ポーズ シーズン2(2019年製作のドラマ)
5.0
S2はマドンナの『ヴォーグ』が席巻する1990年からスタート。ポップカルチャーが世界を変える機運に期待を募らすブランカだが、クィアカルチャーは何度も時代に消費されてきたのだとプレイ・テルが諭す。エイズの影が濃くなる中、2人は共に激しく命を燃やしていく。今シーズンも熱い!!

E1
プレイ・テルが触発される運動ACT UPについてはフランス映画『BPM』でも詳しく描かれているので、こちらもぜひ。やや厭世気味だったプレイ・テルが再び苛烈さを取り戻す。ビリー・ポーターが巻頭からエンジン全快の好演。

E4
ライアン・マーフィー監督回。やけにベタベタしているが、今シーズンのテーマは団結とシスターフッド。そうなるとプレイテルのガンコさは男性特有の有害さに見えなくもなく、そのグラデーションこそ本作の巧みさでもある。そして死の影が濃い90年代は、今を生きる僕らにも強く訴える。

E5
いよいよデイモンにビッグチャンスが巡ってくる。LGBTQにとってメインストリームになること、ロールモデルを生み出すことの重要性は無為に生きている僕らは気付きにくい。
一方、前回までの殊勝さはどこに行ったのか、大暴走のエレクトラに笑う。キャラが破綻しようがそんなの関係ない!

E6
病魔に倒れたプレイテルを描く『エンジェルス・イン・アメリカ』×『オール・ザット・ジャズ』回。ビリー・ポーターが素晴らしい。彼は『POSE』の座長役者だが、最後となるS3のエミー賞はぜひキャストみんなで作品賞を取ってもらいたい。ハリウッドもそろそろ準備が整ってきたのでは?

完走。
S1に比べると軽く、シーズン最終回で男性優位主義を批評するためとは言え、キャンディのエピソードはやや唐突な感。とは言え、前シーズンで登場人物を愛した人には十二分に楽しめるし、連帯とロールモデルの重要性、毎話最後に語られる先人の言葉には熱くならずにはいられなかった。

見終えたタイミングでビリー・ポーターがエイズ陽性を告白し、自らの半生を明かした記事には驚かされた。S2ではエイズによって多くの若者に先立たれ、生き残った者へ“知恵”を継承する中年セクシャルマイノリティの老いを味わい深く演じていたが、そこには想像以上の演技的バックグラウンドがあったのだ。
長内那由多

長内那由多