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半沢直樹 続編のmegurosのレビュー・感想・評価

半沢直樹 続編(2020年製作のドラマ)
4.2
シーズン1はそうでもなかった(...ように記憶している)ので今作はスルーしようと思っていたが、たまたま観たら暑苦しくて男臭くて、うっかり通しで観てしまった。

スマホ時代のドラマ作りなのだろうか、前作と比べるとセリフが早く、会話の”間”も短くなっていて(シン・ゴジラを参考にした?)集中を途切れさせない。シーンの省略も大胆に、足りない部分はナレやテロップで補い、カットを細かく繋ぐその編集テンポがまず素晴らしい。緩急付ける形でゆっくり見せる部分では、堺雅人と歌舞伎役者が顔を突き合わせて大見得を切り合う....という割り切りがハッキリした。役者陣も演技の大袈裟さに拍車がかかっていて、愛之助などは前作では突飛なキャラ故に若干浮いていたが、今作では馴染んで全体のバランスも良くなっている。

勧善懲悪の時代劇だという言われ方をしているようだが、自ら捜査をして自ら裁きを下す点では「遠山の金さん」。半沢は、企業だけでなく政府も腐りきっているこの国この時代、そして銀行が連日謝り倒しているこのタイミングにおいて、権力や空気に屈せず正義や倫理を堂々と主張していく。「記憶にないで済むのは国会答弁だけの話です。ここは国会ではありません。そんな馬鹿げた言い訳、一般社会では通用しない!」...とズバッとやってくれるから気持ちはいいのだが、ファンタジーに浸りつつも現実には半沢は存在しない...という悲しさも同時に付き纏う。

※見方によっては半沢もかなりアウトな人だが、敵の悪事が常軌を逸しているため、クリーンプレーでは太刀打ちできない、ということは我々もよく考えねばならない。リヴァイアサンを縛る憲法という鎖が機能しない中、どう権力を制御しうるのか...。

今回、前半がセントラル証券でvs銀行。後半は半沢が出向から戻って東京中央銀行vs政府となるが、前半で若手に語る仕事論(第4話)なども(会社では中堅に差し掛かって若手と働く自分にとっては)わが意を得たりな感じが強かった。

“仕事は客のためにするもの、ひいては世の中のためにするものだ。その大原則を忘れ自分のために仕事をすると、その仕事は内向きに醜く歪んでいく”

人が腐れば、組織が腐る。組織が腐れば世の中が腐る。上戸彩の役回り含めて新しいジェンダーロールを提示するようなドラマではないが、大事なことはしっかり語られているように思う。
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