こたつむり

ストロベリーナイトのこたつむりのレビュー・感想・評価

ストロベリーナイト(2012年製作のドラマ)
4.5
パイロット版に引き続いて再鑑賞。
相変わらずバランスの良いサスペンスですね。

猟奇的な描写。捜査陣を美化しない筆致。
細部にこだわった捜査方法。適度にデフォルメされて確立された登場人物。事件に対する視点は辛口ながらも優しさと理想を含み、それでいて消化しやすい配慮も忘れていません。

何よりも配役が神懸っています。
主演の竹内結子さんも然ることながら、西島秀俊さんや生瀬勝久さん、遠藤憲一さん、渡辺いっけいさん…誰も彼もが存在感をグイグイと前に出してくる濃厚さ。

極めつけは武田鉄矢さんですね。
主人公すら食わんとする雰囲気を醸し出すのは見事な限り。丸めた週刊誌を武器にするのはコメディすれすれですけど、それでも許される不穏さを纏っていました。

あと、個人的に好きなのが高嶋政宏さん。
手のひらを見せて「よろしく~」という決め文句がバッチリとハマっているんですよ。ああいう上司になりたいな…なんて身の程知らずの想いを抱いてしまうくらいに最高でした。

ちなみに「映画は監督のもの、ドラマは俳優のもの」とはある女優さんの発言ですが、本作は俳優さんの個性で成立した物語だと思います。

また、今回は再鑑賞なので“主軸”を見誤ることなく捉えることが出来ました。と言うのも、前回はミステリとして期待してしまったんですね。

でも、本シリーズの軸は主人公の想い。
過去に傷つけられた女性が組織の中で抗いながら“自分を貫く”という姿勢が大切。今回は足元を見失わないように気をつけました。

まあ、そんなわけで。
過去から逃れようとする女性を描いた物語。
地上波で放映されてから10年以上経ているのに、古びていないのは感嘆の極みです。硬派な物語をお探しならば確実にオススメですね。

そして最後に。
竹内結子さんのことを思うと色々と複雑な気分です。本作の印象は強烈ですからね。現実でも負けないでほしかった、と思うのは不遜でしょうか。ご冥福をお祈りいたします。
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