わおん

LOST シーズン6<ファイナル>のわおんのレビュー・感想・評価

4.5
【全シーズンを通して】
 実を言えば、酷評しようと思っていた。その文面を考え始めてさえいた。一昨日までは。
 ドラマについて感想を書くすることは少ないのだが、「LOST」については書いてやろうと思っていた。なんて酷い出来なんだ、と。でも、今は別の理由でツイートせざるを得ない。
 そんなドラマが他にあっただろうか。初めての経験だった。わけがわからない、ハズレだな、と半ば決めつけながらも最後まで見届けたこと、正しい選択だったと思う。いや、そんなふうに、よくわからないけれど最後まで観てみなければ…と思わせ導いた、それこそこの作品の持つ力なのかも知れない。
 サバイバルドラマ、サイエンス・フィクションだと思っていた。だから、何がなんだかよくわからなかった。製作者の言いたいことがわからない、このドラマの芯が見えてこない。あまりのわからなさに、イライラしてさえいた。
 最後の最後まで観て、私は間違いに気づいた。島は、現世の悔いを断ち切れない人々が集まる死後の一時的な場所であり、時間をかけて悔いや葛藤と対峙し、先へと進む術を見つける場所、煉獄なのだということ。これは贖罪をテーマにし、キリスト教的な価値観に、深いところで結びつくドラマであった。
 タイトルの「LOST」とは何か。それは、道を見失った彷徨える罪人たちのこと。彼らが彼ら自身の現世の罪や悔いと向き合い乗り越えることによって、魂が浄化され、次(天国のような場所だろうか?)へと進む。それがこのドラマの芯の部分だったのだと思う。
 登場人物たちは、墜落前の世界(つまり現世)において、わかりやすい罪を背負っていたけれど、人は誰しも生まれた瞬間に罪人だ。私たちは日々罪を背負い、新たな罪を犯し、それらを悔い、また背負って生きていかなければならない。このドラマは私たちを写す鏡のようなドラマだった。
 これまでに私は、多くの日本のドラマと、いくつかのアメリカのドラマを観てきたが、その多くはエンターテインメント色が強く、時間を潰すための娯楽のつもりだった。
 でも「LOST」はそうではない。読書においても、文学と文学ではない本とがあるように、「LOST」はいわゆる文学側のドラマだった。
 私はこの先、このドラマを何度も見返すだろう。それはもちろん、ドラマを深く理解するためでもあるけれど、何より、私自身が変わってゆくからだ。変わり続け、罪を犯し続け、それらを背負い続ける私が、変わらぬことを伝え続ける「LOST」を観て、何を思い、考えるのか。それは今とどう違うのか。
 それがとても気になる。人生には希望など欠片もないが、もし生きていくのだとしたら、自分自身の変化は楽しみな気がする。
わおん

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