JT

LOST シーズン6<ファイナル>のJTのレビュー・感想・評価

5.0
信じること、手放すこと、赦すこと
愛すること、生きること、死ぬこと
一生涯で費やすべきものが詰まった大傑作

この作品を知って初めて鑑賞した時から丁度10年が経って、たったいま5週目を観終わった。回数を重ねるごとに何倍にも深みと理解が増して涙が流れる。自分の人生においてこれだけ思い入れの強い作品は他にない。きっとこの先も何度も見返して、考えて、感じて、想いを寄せる。そして自分がこの世を去る直前に、必ずこのエンディングを思い出すだろう。

本シリーズは過去と現在と未来と死後の時間軸が複雑に絡み合うため、多くの人がある勘違いをしてエンディングは激しく賛否両論が分かれたが、決して夢オチなどと言った雑なものではない。注意深くみて、考えれば点と点は繋がる。伏線はほぼ綺麗に回収されており、よく、宗教的で日本人には向かないなどのコメントを見るがそんなことはなく、たしかに随所で聖書の話が絡んではくるが人間の死生観を語る上で密接な聖書を用いているだけであって、本作で描かれる人間の存在や死後、運命などは自分の想像力を働かせればそれぞれ答えはだせると思う。そして大切なのはこのシリーズがSFだと言うこと。このドラマが伝えたかったことや答えを全て明確に観客に提示する必要は全くもってないし、おもしろみに欠ける。SFの醍醐味は観客側がそれぞれ答えを考えることだと感じ、そもそもこのドラマに残された大きな疑問は、島は一体なんだったのか、死後の世界はなんだったのか、この2つだけである。その疑問こそ私たちが個人個人で考えるべきもので物語の肝。多くのキャラクターから自分を投影できる人物は必ずいて、ほとんどのキャラクターにそれぞれのテーマがあり、観客全員が同じ答えを導くことはないけれど、この物語と私たちの人生で大切なものは実はすごくジンプルなものなのかもしれない。

"LOST"というタイトルには様々な意味が込められていると思いますが、エンディングにこそ全てが集約されていたと思います。「去るのではなく、進む」幸福な消失なのです。

脚本、演出、音楽、どれをとっても記憶に焼き付く名作。
JT

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