テリーマザーファッカー虎

MM9-MONSTER MAGNITUDE-のテリーマザーファッカー虎のレビュー・感想・評価

MM9-MONSTER MAGNITUDE-(2010年製作のドラマ)
4.7
山本弘による名作SF小説を原作に、総監督:樋口真嗣(シン・ゴジラ、平成ガメラシリーズ)、監督:田口清隆(ウルトラマンZ、UNFIX)、脚本:伊藤和典(パトレイバー、平成ガメラシリーズ)という『パトレイバー』以降耕されてきた日本のリアルSFの職人達が集められて製作された傑作特撮ドラマ

現実の延長線上の世界であくまで役人として怪獣災害と戦っていく様を見せていくドラマ作りはまさに『シン・ゴジラ』。この方程式を2010年で既に完成させていたとは恐ろしい。

尾野真千子と石橋杏奈を筆頭に今振り替えるとかなり豪華な役者陣も素晴らしい。特に高橋一生、松尾諭のキャスティングは『シン・ゴジラ』への伏線を感じたし、まだデビュー間もない橋本愛にもビックリ。『仮面ライダーアマゾンズ』の加藤貴子のアニメ声なキャラクターも素晴らしかった。

基本は怪獣が大きく出る場面はほぼ無いものの、しっかり決める場面では決めてくれて怪獣ファンも楽しめる作りになっていました。

神回として挙げたいのが巨匠田口清隆が監督を務める第5話『吹谷町M防衛線』と第9話『密着!気象庁特異生物対策課24時』
第5話はまさにリアルSFといったテイストで、現場に行けずTVやネットを駆使して怪獣について調べる特異対や自衛隊との政治ゲーム、そして怪獣vs.自衛隊などこの回だけでかなりお腹いっぱいな作りに。
第9話はのちに田口監督が『ウルトラマンX』でも行った警察24時の完全パロディ。ただワンカットの臨場感溢れる特撮シーンなど田口監督の真骨頂が拝める回でした。

他にも樋口監督が自らメガホンを取り全編白黒で小津安二郎オマージュを行った第6話などバラエティー溢れる回が目白押し。

しかもナレーションに『ウルトラQ』の石坂浩二、EDの影絵に『ウルトラマン』のOPの影絵を担当した飯塚定雄など円谷へのリスペクトも忘れない姿勢。
斉藤恒芳によるウルトラシリーズを彷彿とさせる音楽も素敵。

正直尻すぼみ感は若干否めないし、解決していない謎も多く残して終わったりするものの、製作スタッフ達の心意気には感動。

現在配信も無し、DVDも廃盤となっていてかなり見辛い状態ではあるものの『シン・ウルトラマン』が公開される今でこそ改めて評価されてほしい名作です。
欲を言えば今こそNetflix等で予算を掛けて作り直してほしい!!