ウシュアイア

不毛地帯のウシュアイアのレビュー・感想・評価

不毛地帯(2009年製作のドラマ)
4.6
元陸軍エリート参謀、元シベリア抑留者の戦後商社マンとして生きた男の半生記。

山崎豊子の長編小説が原作で、2クール全19話の長編ドラマ。

戦中は軍のエリート参謀として培った頭脳を生かして、戦後商社マンとして商社の旧態依然とした体制の中でライバルや悪者を退けてステップアップしていく様子はさながら『半沢直樹』のよう。

しかしその過程では、様々な人脈の利用のみならず、自衛隊の機密情報を入手したり、戦争の情報を入手して物資で一儲けしたり、新聞記者に自分に都合のいい記事を書かせたり、政治家に金を渡して便宜を図ってもらったりと、今では正々堂々とは言えない、まさに清濁併せ吞むやり方を取っている、というか、取らざるを得ない状況になっている。

主人公の生き方は今の感覚では理解できない部分も少なくない。時代的なものはさておき、理不尽な会社組織、日本の社会で生きる一人の人間の葛藤の物語として観ると共感できる部分も多いのではないかと思う。会社のことに関しても、家族のことに関しても、観ていると複雑な思いにさせられる。

さらに今日は終戦の日だが、戦争の記憶はどんどん忘れ去られている。シベリア抑留については沖縄戦や原爆投下に比べると知らない人も増えてきている。シベリア抑留を映像にして再現したことは目を背けてはいけない戦争の記録としての価値もあると思う。極寒の地シベリアでソ連の下で強制労働をさせられ、多くの仲間を失い、ビジネスのためとはいえ、ソ連に再び足を踏み入れなければならない主人公の苦悩は泣かされた。

主演の唐沢寿明をもとより、先見性のある気鋭の社長から老いて過去の栄光にとらわれて老害となってしまった社長役の原田芳雄、社内で激しく対立することとなる副社長役の岸部一徳、主人公を支える妻・和久井映見の演技が素晴らしかった。
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