こたつむり

侍戦隊シンケンジャーのこたつむりのレビュー・感想・評価

侍戦隊シンケンジャー(2009年製作のドラマ)
4.5
小林靖子さんがメイン脚本と耳にしての鑑賞。
やはり巧いですよね。押さえるべきポイントを熟知しているから、迷うことなく楽しめば良いだけ。脚本に限れば、見事なまでに隙がありません。

特に見事なのが配役によってアレンジしている部分。今では飛ぶ鳥を落とす勢いの松坂桃李さんですが、本作がデビュー作。放送が始まった頃の回なんてメチャクチャに“ぎこちない”のですが、それを物語の中に組み込んでしまっているので、違和感がないのです。

しかも、それが物語終盤に活きるのですから…。これを踏まえて配役したのかな、と思うほどにジャストフィット。未だに一部で「殿」と慕われるのは、この脚本が下地を作ったからでしょう。流石です。

また「モヂカラ」の設定も素敵です。
言霊の亜流ですが、対象は未就学児ですからね。字を書く楽しさが放送を通じて伝われば…それは色々な意味で良い話。こういう地道な部分で配慮されているのは保護者として嬉しいです。

それでいて敵方の造形は遠慮なく猟奇。
敵のボスからして《血祭ドウコク》って…ガチで怖いですよ。ヒーローショーで出てきたら絶対に泣くでしょう。いやぁ。製作者もガチですな。

更には背景もアダルトな雰囲気満載。
正直なところ「日曜日朝に未就学児を対象に放送したの?マジで?」と驚くのは確実。どう考えても保護者向けの案件です。千切れるほどに切ない“情念”を理解する保育園児がいたら恐ろしい話ですから(なお、ネタバレ厳禁ですので御留意の程)。

まあ、そんなわけで。
幼児向けの番組と侮ると勿体ない作品。
短時間で美味しい部分だけを切り取らないと子供は飽きますからね。エンターテイメントの基本が戦隊ヒーローには詰まっていると言っても過言ではないので、物語を読み取る力を養うにも最適な素材だと思います。
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