虎舞羅ーコブラー

ゴンゾウ~伝説の刑事の虎舞羅ーコブラーのレビュー・感想・評価

ゴンゾウ~伝説の刑事(2008年製作のドラマ)
4.2
「仁―JIN―」で坂本龍馬役を演じた名優、内野聖陽さんが風変わりな刑事を演じるTVドラマ。

8月末から9月初旬にしばらく長期休みが続き、平日は勉強をしながら過ごしていました。そんな中、テレビ朝日系列のチャンネルで平日昼3時頃に放送されていた本作。サスペンス好きな祖母と共に見始めると止まらなくなり、最終話まで見終わってしまいました。再放送でしたが本当に終わってしまったのだと認めたくないほど、最後まで目が話せないドラマでした。

ゴンゾウ、それは最低限の仕事しかこなさなかったり、才能はあるのに働かない「厄介者の警官」を指す警察用語。
そんなゴンゾウと後ろ指を指される元凄腕の刑事を、内野聖陽さんが熱演しています。かつては伝説と呼ばれた刑事であるものの、とある事件で愛する人を奪われ、そのトラウマに苛まれてしまったことで事務係に移動させられることに。無気力に事務をこなす中、女性バイオリニストと女性警官が撃たれる事件が発生し再び捜査の最前線へ。その事件を追っていくと、過去に愛する人を奪った真犯人がいるのではないかと判明し、トラウマに苦悩しながらも進んでいく姿が描かれます。
本作で重要なワードである「この世界に愛はあるの?」というセリフがあるのですが、ドラマ全話を通してゾクッとしてしまうような響きの言葉になっていきます。主人公の黒木刑事の婚約者が最後に言い残した言葉であり、彼の精神を縛る言葉です。黒木刑事にPTSDの症状が表れるシーンは、幻想的でもあり狂気的でもあるフラッシュバックとして表現されており、それにより“真犯人を捕まえたら俺も自殺する”と言い放つように。リボルバーをこめかみに押し付け、「まだ死んだらダメなんだな…」と呟く様は我々の心を締め付けます。ですが最終話の黒木刑事が出した答えは、涙無しでは見られないほどに悲哀に満ちていました。彼が選ぶのは、絶望か、希望か。重厚で濃密なストーリーが訴えかけるものに、思わず涙してしまいましたね。

10年近く前の作品ですが、やはり今見ると少し激しい描写も徹底されていて、コメディとミステリーのバランスが上手く取れているように感じます。笑うとこは笑って、考えるとこは考えて。隠れた名作を発掘出来ました。
オススメです!