みバとカも

ラスト・フレンズのみバとカものレビュー・感想・評価

ラスト・フレンズ(2008年製作のドラマ)
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放送時も(10年前!)わりと毎話見てたと思うが今年一気に見直した。これ、冷静に一気見するとやっぱり変なところだらけではあるんですよね。特にあのシェアハウスどうなってるんだ問題が大きくて、CAや一般の会社員はともかく、美容師見習いやスタイリスト見習いって給料高くないだろうし、オートレーサーだって試合で勝ち続けないと金銭面は大変でしょう。場所的にはおそらく井の頭公園を南に縦断して三鷹市側まで歩いていったところにあのシェアハウス自体はあると思うので、武蔵野市と三鷹市の境界の、ギリ三鷹市側にあると推測されます。そんな良い場所にあるあんな大きな建物、家賃はいくらするのか、もしくは誰か所有者から譲ってもらったのか(地元なので土地勘が働くんです……井の頭公園の舞台、長澤まさみの働く美容院、錦戸くんに出くわすLOFT、錦戸くんの元へ走り去る時の大正通り側の東急、全部場所が分かる。ちなみにあのシェアハウス自体は三鷹市には無くて、千葉でロケしているそうです)。あの肝心のシェアハウスの生活感の無さはちょっと美術もっと頑張ってほしいなと。男ばっかりで共同生活してる友人たちがいるけどあんな何部屋も共同スペースないし、テーブルの上とかゴチャゴチャでしたよ。
ストーリーや途中の展開に関しても突っ込めるところはいっぱいあって、でもそれぞれキャラクターが魅力的で、その関係性で引っ張っていっているのでそこで見れちゃうところはありますよね。同性の同級生に対して完全な恋愛感情を抱くオートレーサーの女性、小さいアパートに男を連れ込む恋愛体質の母親(なんと倍賞美津子!新井英樹が描く感じの中年男女の恋愛!男を連れ込んでイチャイチャしてるのを長澤まさみが見てる場面に漂う嫌な感じは、「北の国から」で小吉くんがお母さんとイチャイチャしてるのを純と蛍が見てる場面のオマージュか?このお母さんの恋愛遍歴を描くスピンオフが見たいぐらいですよ!)を持つ若い美容師見習い、再婚して出来た姉からの性的虐待がトラウマとなっていて恋愛に踏み込めない、ゆえにゲイだとか言われてしまう若手スタイリスト、自分もかつて虐待されていたからそういった子供達を援助しようと児童福祉課に入ったにも関わらず、自分もまた恋人に暴力を振るう男……メインキャラ4人はハッキリ言ってそれぞれ類型化されパターン化されたものではあるんですけど(錦戸くんの「かつて虐待されていた故に自分もまた虐待してしまう」は特にね)、脚本の浅野妙子氏はこれだけの人物造形をよくやったなぁと思うし、それぞれの服装や髪型といったスタイリングも上手くいってる。何よりこうしたキャラクターを完璧に演じきった俳優陣はすごい。これ、ひょっとして当て書きなのかなぁ……。よく言われると思うんだけど、上野樹里の「のだめ」とのギャップはやはりすごい。この人ってやはりデ・ニーロ的なメソッド演技なんですかねえ。
同時にやはりジェンダーとかセクシャリティの描き方の観点から見ても注目すべき作品である。上野樹里の長澤まさみに対する恋愛感情、本当に見ていて辛い。彼女の恋心は、長澤まさみが異性愛者である以上成就することがないし、一方で瑛太の上野樹里に対する感情も友情や恋愛といったもの自体を超越したものであって、だから井の頭公園で二人が抱き合うところは(瑛太の台詞回しがやや臭くはあっても)観客の感動を呼ぶ。ほんと、繰り返しになるけどこれだけの人物たちと、その関係性をよく造形したよなぁと感心します。
当時はかなりセンセーショナルな内容として話題になったと思うし、10年経ってLGBTという言葉も定着した感があるんだけど、このドラマは必ずしも同性愛やドメスティックバイオレンスや性的虐待といったテーマをセンセーショナリズムありきで描いているわけではないと思う。アウティングの中傷チラシがオートレースの練習場でばら撒かれる→上野樹里が服を着たままシャワールームでシャワーを浴び続ける、とかリアルタイムで見ていた当時もかなりショックを受けたと思う(あのデリカシーのないコーチもムカつくけどいい味出してましたね。演じてるのは田中哲司ですが、仲間由紀恵という妻がいながらにしてよく知らない安い女と浮気していた……アホか!!)。この場面に関して言えば最近、現実でもLINEグループで同性愛をアウティングされた学生が自殺したってこともありましたね……だけど作り手はセンセーショナリズムありきでそういった題材を選んだわけではないとは思うし、ここで描かれたものではなくても若い世代の悩みや苦しみといったものは広い意味でいつの時代も普遍的に共通したものではあると思う。少なくとも描き方自体は誠実ではあるとは思う。しかしながら、イケメンのましてやジャニーズが恋人に暴力を振るうというのは、ともするとドメスティックバイオレンスを美化しかねない倫理的な問題があるよなぁ、とは思う。錦戸くんの芝居が上手いがゆえの問題。あの錦戸くんと長澤まさみって完全な共依存関係ですよね。それに対してあのシェアハウスがある意味駆け込み寺的な役割を果たしているんだけど、もしあのDV周りの描写で万が一「錦戸くんと付き合えるなら暴力振るわれても構わない」って思うファンがいるとしたら問題。まぁいくらなんでもいないとは思いますが……。
いずれにせよ、かなり議論を呼ぶ内容ではあるし、一定数受け入れられない人もいるとは思いますが、ゼロ年代のテレビドラマの中ではやはり重要な一本だと思います。続編作られないのかなって思うけど、浅野妙子さんが後日談を小説にしているらしいです。未読ですが是非読んでみたい。