トランティニャン

ハゲタカのトランティニャンのレビュー・感想・評価

ハゲタカ(2007年製作のドラマ)
4.5
こんなに骨太で面白いドラマを見たのは、役者のアップがこんなに耐えられるドラマを見たのは――いつ以来なんだろうかと当時興奮した。

外資ファンドによる企業買収劇に止まらない、「人間」に重く深く切り込んだ脚本。派手さの無い、むしろ地味ながらツボをしっかり押さえたキャストによる迫真の演技。

このドラマに出てくる登場人物は、誰しもがその双肩に過去と未来を背負っている。顧客や従業員を救えなかった過去、家族を失った過去。従業員やその家族の未来、そして会社の未来。その耐え難き重さに潰れそうになりながらも、彼らは己を信じて、ロジカルに再生の道を見出していく。  
だいぶ説明的に作られているものの多くの経済用語が飛び交うので、話の流れがつかめない人もいるかもしれない。逆に、その道に明るい人にとっては、情緒的な人間ドラマを盛り込んだせいで原作本来の面白さが損なわれている、と感じるらしい。

ただ、このドラマを見た人が言葉にしがたい感動を味わうのは、物語の主題が経済ネタではなく普遍的なテーマに寄り添っているからだ。人は相手を立ち直らせたいと思う時、どう接するのか。徹底的にダメ出しをするのか、それともとりあえず相手の言い分も聞いてやるのか。そして、人は過去や逆境にどう立ち向かい、未来を勝ち取っていくのか。それを支えるのは野心なのか信念なのか。

「俺もお前と同じだ」
物語の終盤に、この印象的な言葉が二度使われる。一度目は、鷲津が西野(松田龍平。鷲津が債権を買い取った旅館経営者の息子)に対して。二度目は、芝野が鷲津に対して。長い対立を超え、互いの力を認め合うことで帰結したラストは、予定調和かもしれないけど力強いものだった。