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白夜行のをのネタバレレビュー・内容・結末

白夜行(2006年製作のドラマ)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

大好きな作品なので1話ずつ好きなシーンを忘れないように書き留め中。
時代もあってか所々詰めの甘さはあるものの、これほど作り手の本気を感じられるドラマはなかなかないと思う。好きなシーン多すぎて…

1話✂️
子役2人の演技がすごい。
子どもにとって嬉しいはずのケーキの箱が、雪穂にとっては恐怖の合図なのが悲しくて。。。
幼少期の雪穂を演じた福田麻由子ちゃんの「やったのは、私だよ」と微笑んだ後に一筋涙を流すシーンが上手すぎる。
幼少期の2人のつかの間の楽しい時間が描かれていて、「タイムマシーンがあったら、過去に行く?未来に行く?」「チャゲとアスカ、どっちが好き?」「ドブに咲く花って知ってる?」のセリフが2話に繋がってる。
このドラマを何周もすればするほど、切り絵で白い花を作って川に浮かべてあげる亮司の健気さと流されてく白い花を必死に追いかける雪穂の姿が切なくて一番泣けてくる気がする。
1話ラストの笹垣と高校生になった亮司がすれ違うシーンの笹垣(武田鉄矢)の怖さと人相が変わるほど目付きから亮司になっている山田孝之の演技
力は何回見てもゾワッとする。

2話✂️
「ドブに咲く花って知ってる?」「本当は…ないんだよ。でもすごくすごく綺麗だった…」
1話のセリフで七年ぶりに公衆トイレで再会するシーンでまず泣いてしまう。
その後の亮司の「菊池も笹垣もぶっ殺して俺が死ねば済む話でしょ?」に対して、雪穂の「あのさぁ、私の幸せって何だと思ってるわけ?」から始まる長台詞でまた泣く。
個人的には「何のために毎日毎日急行電車に乗ってると思ってんのよ!各駅だと降りちゃうからでしょ?!あんたが立ってるから、降りたくなっちゃうからでしょ?!」がすごくすごく好き。
結末を知ってるから、これからも度々登場する「太陽の下を2人で歩く」という言葉がより切なくて悲しい。

3話✂️
売春で雇ってた園村がヤクザの女とやって腹上死させてしまう回。園村には「なんとかしてやっから帰れ。」ってクールに言うのに結局雪穂を呼ぶ亮司が小さい頃から変わってない感じで可愛い。
自首しようと言う亮司に「その人(園村)と亮くん血液型違う?」って聞く雪穂。
「俺に死体とやれって?俺の事なんだと思ってんだよ!なんで俺がそこまでしなきゃいけないんだよ!」「逃げ切るために決まってるでしょ!」から始まる怒鳴り合いのシーンが特にお気に入り。
「同じことだつってんだろバカ女」って珍しく雪穂に楯突く亮司。
雪穂が折れて自首することになるけど、その前に教会に寄る2人。そこで「なんであの時(お母さんと死のうとした時)終わらせてくれなかったのよ」と泣き叫ぶ雪穂を見た亮司は「俺強くなるから。」と誓って、結局死姦するのがしんどすぎて心が死ぬ。
教会のシーンのナレーションで亮司が「俺、好きな女に何させてんだろ」って言ってるけど、亮司と雪穂は好きとか愛してるとか使わないのでレアな気がする。山田孝之のナレーションがとにかく上手い。良い。
3話ラストの「俺、レッドバトラーみたいに生きてみようと思う。」から始まる手紙が悲しいけど素敵すぎる。ここまで想われてみたいなあ。

4話✂️
腹上死を庇った園村を喫茶店に呼び出す冒頭のシーンが大好き。「俺、お前のためなら何でもするよ!」という園村に「まあ当然だな。」と言いながら上を向いて煙草の煙を吐く亮司がかっこいい。
黒い絆で強く結ばれている亮司と雪穂だけど、雪穂はサークルOBの篠塚先輩に恋をしてしまう。
それに気がついた時の亮司の表情と「傷つけてやりたいと思った、守りたいと思った時と、同じ強さで。」という言葉から亮司の強いショックが伝わってくるから、すごい台詞だなこれ。
その後ホテルで会ったときの「許さねえからな、自分だけ都合よく一抜けなんて」とキレる山田孝之のお芝居がすごすぎて見てるこちらもとにかく苦しい。

5話✂️
篠塚先輩が平和な家庭で育っただけの苦労知らずの雪穂の友達と付き合ってしまう回。
今までは2人の真実に触れた者だけを不幸にしてきたけど、この回では雪穂が「やっちゃってくんないかな。ただ不幸にしてほしいの。」と友達を襲うように亮司に頼む。
亮司は引き受けてくれなくて、松浦をホテルに誘って頼もうとする雪穂に「なんで…?」って弱々しく問う亮司だけど、雪穂は「亮は正しい。でも正しいことなんて言われなくてもわかってんだよ。」って冷たく言い放つこのシーンはとにかく綾瀬はるかがすごかった。結局松浦とできなかった雪穂に「かえろ…雪穂」って言う亮司。
そこから脅しに使われた売春させられてた頃の写真を「これ笑えるようにならなきゃいけないんだよね?」って言いながら亮司に叩きつけるシーンは何回見ても泣かされる。雪穂の気持ちも分かるんだけど、結局またやってあげることにする亮司がかわいそうでもある。
ラストの雪穂の「騙される方が悪いのよ」にキレた亮司が、植木鉢を雪穂に投げた後の山田孝之の目付きがすごすぎた。亮司が自分に植木鉢を当てられないことがわかっているから微動だにしない雪穂。突き放すのが雪穂なりの優しさなのがつらい。

6話✂️
亮司に襲われた友達はそれ以来親が学校まで送り迎えに来てて…それを見た雪穂はすごく複雑な心境になったんじゃないかな、と思う。雪穂にはそうやって心配してくれる大人が周りにいないから。。。
亮司がついに松浦を刺してしまって、その時の「言わなかったじゃん、あの事だけは」って松浦のセリフが印象的。
現場に落ちてたネガを拾って雪穂に渡す亮司。
ネガと亮司のコートについた血で松浦を殺したことを察した雪穂が「私だってあんな男死ねばいいと思ってた。だから、やったのは、私だよ。」ってここで1話の台詞出すのめちゃくちゃずるい。

7話✂️
亮司の電話越しの「ちゃんと幸せになれよ」がかっこいい。事情聴取を受けることになった雪穂が被害者として泣きながら証言した後にニヤって笑って見せて笹垣を煽る度胸えげつなさすぎ。
笹垣のコスプレで雪穂の前に登場する亮司かわいい🥲
雪穂は高宮とか言うボンボンに上手く近づいて結婚する運びになるのに、高宮がいきなり佐藤仁美(役名何だっけ)に片思いするの謎すぎて笑う。
屋上のシーン、亮司「雪穂も何もかも失うかもしれないよ。」雪穂「元から何も持ってない、亮以外。」良すぎる。

8話✂️
亮司が一瞬だけど、太陽の下に戻れてる。
高宮と離婚して慰謝料ふんだくるために高宮と喧嘩して睡眠薬で眠らせた後、亮司に自分を本気で殴らせる雪穂の根性すごすぎて絶句してしまう。
離婚してブティックの名前をR&Yに変えた雪穂を見た亮司の「いつまでも生きたいと思った。いつ死んでもかまわないと思った。」というナレーションに愛の深さが出てる。
2年間、好きじゃない男の妻でいるの屈辱的だっただろうなあって思うけど、全部亮司を太陽の下に戻してあげるためだと思うと強いよなあ。
亮司はずっと後ろめたくて、償いたいって思ってるけど、雪穂は吹っ切れてる。ここが男女の違いであり、2人の育った環境の差かなあと思う。

9話✂️
雪穂大好きマンなので西田尚美(役名何だっけ)がむかつくしやだ。西田尚美に初めてを聞かれて「冷たい人(死体)だったよ」って答える亮司しんどい。西田尚美に青酸カリを持ってくるように脅す亮司がいい。
雪穂はせっかく義理のお母さん(八千草薫)と打ち解けてたのに、真実に触れられてしまって、ここからが本当につらい。「自首しい。長生きするから、待っててあげるから。あんたの帰ってくる場所はいつでもあるんやから。」ってお母さんは言ってくれるけど、「一人じゃないから、行くわけにも、戻るわけにもいかないの」って泣きながら手をかける雪穂の姿が悲しすぎる。そこに亮司が現れて、雪穂に「2度目はダメだよ」って言うのがまた、、、もうリアルな死は感じたくないと言っていた亮司がまた雪穂の為に手を汚す姿が切なくて。そんな亮司に対してお母さんの「2人してそのザマか、あわれやなぁ」が、、、
亮司はここで「正しいことなんて言われなくてもわかってるんです。」って言うの。5話で雪穂に言われた台詞。正しいことはわかってるって、本当にその通りだよなあ。八千草薫さんの大女優としての格を感じる回。

10話✂️
亮司のお母さんの「あの子はまだダクトの中にいる こんな人生しかあげられなくてごめん」がつらすぎる。亮司のお母さんは雪穂のお母さんと違って、毒親でも毒親なりに後悔していて、愛情がないわけじゃないんだよなぁ、、、
この回は図書館の司書さん(余貴美子)がすごく効いてる。

最終話✂️
笹垣あんな刺されて血出てるのに死ななくて手強いw
亮司が死んだ意味が無くなっちゃうから、全てを背負って生き地獄を選ぶ雪穂の気持ちを考えると胸が苦しくなる。
「桐原亮司は私の初恋でした。」から始まる取り調べシーン、最初のその一文だけが真実であることがつらすぎた。
人生を捧げた人間より捧げられた人間のほうがつらいという篠塚先輩の言葉、確かになあ。
全てを失ってしまった雪穂、どうやって生きていくんだろう?とフィクションなのに真剣に考えさせられた。

鑑賞するのにパワーが必要だけど、見て損はない。
各シーンで流れる河野伸の劇伴がどれも素晴らしく、特に「白夜を行く」と「君を照らしていたい」の切ないメロディと盛り上がりの部分の迫力は1度聞いたら忘れられない。
主題歌の影も柴咲コウが白夜行のために書き下ろしただけあって作品の深みをよりグッと引き出してる。
18歳〜26歳を演じければならないこの作品で、山田孝之と綾瀬はるかが20歳前後のときにこれを撮れたことが本当に奇跡。今の20歳前後の俳優で亮司と雪穂を演じきれる人はいないだろうから。
主演2人だけでなく脇を固める俳優陣も皆実力派で凄みがあった。
何より「2人をモンスターにしたくなかった。」と語る森下佳子さんの原作へのリスペクトもきちんと感じられる脚本がすごい。
最近はコンプラが厳しいから仕方ないのかもしれないけど、こういう作り込まれたずっしり中身のあるドラマを見たいなあ。
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