みとも

宇宙を駆けるよだかのみとものレビュー・感想・評価

宇宙を駆けるよだか(2018年製作のドラマ)
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伊集院光がラジオで大絶賛したNetflixオリジナルドラマ。Netflix作品である以上吹替や字幕は各種言語に対応しているし、オリジナルアニメでは『デビルマンcrybaby』等がすでにそれをやったように、ドメスティックな日本的ドラマに終わらずある意味世界的に通用する作品を作れるポテンシャルがあるはずの企画だが、多用されるモノローグやフラッシュバック、わざとらしいスローモーション、初期perfumeじみたサントラなどがちょっとしんどくてですね、従来の日本的ドラマでないものが見たいと思う反面、やはりこの俳優陣の演技合戦は他では見られないとも思う。
見た目も中身も美しい人物と、見た目も身も醜い人物との入れ替わり、更に男子2人も加わってのある種の4角関係というのは原作漫画ありきの発明であるが、はっきり言ってこんなもの漫画でストーリーだけ追っていても別に面白くないわけで、そこには一人二役(実質的には一人三役ですか)を務めさせるという役者に対するある種の無茶振り、対照的な二人のキャラクターを一人の人間が演じることによる「嘘」のつき方、リアリティラインの揺らぎ、更にそこから発生する俳優の生身の人間性までもが透けて見えるドキュメンタリー性込みで面白がるものである。これ自体は日本映画界の文脈で言えば大林宣彦がとうの昔にやっていることだし(相米慎二も含めた角川映画のやり方ね)、邦画歴代興収2位でありながら個人的には全く面白くもなんともなかった『君の名は。』に辛うじて何か面白みを見出すとするならば、入れ替わった時の神木隆之介・上白石萌音の声の芝居でしかない。神木隆之介が女声出すのは一部の人にはたまらないものがあったでしょ。まあぼくもそこにだけは萌え萌えだったわけですが。
というわけで『宇宙を駆けるよだか』である。メインキャラ4人の芝居、特にやはり清原果耶、富田望生、重岡大毅の熱演だけでも見るに値する。間違いなくこの人たちは今後名優になっていくだろう。清原果耶は『三月のライオン』のときから良い演技するなぁと思っていたが入れ替わり後の芝居はすごい。富田望生も今までちょいちょい映画で見てきたとは思うのだが、何しろ見た目は太ってても中身は誰よりも美しいので、特に髪留めを付けたあたりからはどんどん可愛く見えてくる。というか実際には全然ブスじゃないですよね。レベル・ウィルソンだって実際には美人だし。もし痩せたら特に。
一方の重岡大毅は『ごめんね青春!』とか『溺れるナイフ』の彼だけど、イケメンで人気者だけどちょっと残念などこかうだつの上がらない男子高校生を演じきっている。関西弁による軽薄なノリ含めて次は完全なコメディをやってほしいのだがどうだろう。同じジャニーズでも暗殺教室とかニセコイとかあんなくっだらないものじゃなくてね、ましてや福田雄一など論外です。もっと純度の高い、ちゃんとしたコメディ映画で好演することができる俳優だと思います。本人はいたって真面目なのに空回りしてそこから発生する笑いとか。いずれにせよやはりこの人はすごいなと思いますよ。神山智洋と入れ替わった時は標準語のはずなのだが若干イントネーションが怪しかった気もするが……。
いわゆる少女漫画の漫画原理として、ヒロインをめぐって、超現実的イケメン王子様と、それと対照的な地に足のついた庶民派代表的いいヤツな男子キャラ2人の3角関係というか、少女漫画の黄金比というか、言っちゃ悪いが少女漫画はほとんどこれで、近年の少女漫画原作映画(キラキラした映像に若手イケメン俳優がJKを壁ドンするだけの今時女子中高生のエクスプロイテーション映画)なんて本当に何も考えずにこれをやっているのでうんざりするのだが、このドラマにおける清原果耶の間の神山智洋と重岡大毅も御多分にもれずこれだったわけで、しかしながら今回のある種のヒールである海根然子をスケープゴートにして3角関係の中に自閉し彼女の問題を全く解決せずに終わるのはもうどう考えてもありえないので、当事者の問題として何かしらの解決の糸口を見つけ出さなければならないわけだから最終回の最後でしっかりそれが果たされてよかった。よかったというか最低限そうしなければキャラクターに対して不誠実だしハナからこんな題材を選ぶなというレベルなわけですが。
あと個人的には神山智洋の重岡大毅に対する捻じ曲がった感情というのも注目すべきだと思いますね。ある意味BLとまでは行かなくても、重岡を傷つけるためにだけに彼が好意を寄せる女性を奪ったという倒錯した関係性はセクシャルな匂いがするし、正統派同性愛描写と言ってもいいでしょう。実は相棒の男性に好意を寄せるゆえに彼の人生を奪って乗りうつろうとする『太陽がいっぱい』のリプリーみたいな。これを指摘したのは淀川長治さんだと思いますが、一方で『ディア・ハンター』なんかもやっぱりそうですよねえ。しかも直接的な肉体関係がない分より純度の高い恋愛感情に見えるっていう。
それにしても重箱の隅をつつくようですが、途中で誰かが入れ替わりに気づかないとストーリーが進まないし、何かしら気づくキッカケを作らないといけないというのは分かりますが、にしても中身が入れ替わったら筆跡まで変わるものなんでしょうか……。