【濃厚な刑事ドラマ】
原作は、スウェーデンの推理作家へニング・マンケルの『クルト・ヴァランダー警部シリーズ』で、小説は読んだことがないけれど、このシリーズから受ける印象は、『特捜部Qシリーズ』に似ている。北欧独特の雰囲気が漂っているのだ。
1話90分のTVドラマながら、鑑賞後は映画を1本観終わった後のような充足感があるが、頭の芯に疲れが残る。それは、どの事件も悲惨だったり陰湿だったり、普通では起こり得ないような事件であり、事件は解決(犯人逮捕、事件の背景が分るなど)しても、記憶は長く澱(おり)のように心の奥底に残るのだ。
主役の刑事クルト・ヴァランダーを演じるのはケネス・ブラナ―。
第1話の放映時(2008年)彼は48歳だが、年齢よりも老けて見えるのは、ヴァランダー刑事の背景のせいかも知れない。
ヴァランダーは、スウェーデンのイースタ署の刑事で、仕事以外には趣味もないような男。家族は、妻と娘のリンダ(ジーニー・スパーク)がいるが妻とは別居中で、どちらかに恋人が出来たら離婚しようということになっている。
リンダは時々、父親の様子を見に来るが、この父娘関係にも問題がありそうな雰囲気だ。
恐らく敏腕な刑事には違いないけれど、そして、彼の刑事としての視点や事件を俯瞰する能力は他に抜きん出ているようだけれど、チームワークという点では署の問題児のようだ。しかし、見た目のくたびれた様子から分かるように、ヴァランダーは一つの事件に向き合った後、深く傷つき立ち直れない。
本作の舞台となるスウェーデンで実際に撮影したらしく、道路の両側に森が続く風景も、一面黄色い菜の花が揺れている景色も、広大な小麦畑が風になびいている様子も美しい。
シーズン1の内容は次のとおり。
【第1話…目くらましの道】
農夫から「自分の畑に不審な女性が入り込んでいる」との通報があり、ヴァランダーが駆けつけると、その女性は彼の目の前で焼身自殺してしまう。その後、元外務大臣や画家が殺害後、頭皮を剥がされるという連続殺人事件が起きる。
【第2話…混沌の引き金】
金銭目的でタクシー運転手を殺害した少女が捕まった。彼女は拘留されるが脱走してしまう。一方、町の広場で中年男性の死体が見つかる。死因は心臓発作とされるが、解剖の結果彼の心臓は健康そのものだった。
【第3話…友の足跡】
ヴァランダーの同僚スヴェードベリが自宅で他殺体で発見される。その前日、スヴェードベリがヴァランダーに何か相談しようとしていたのを無視してしまったことから、彼は自分を責めることになる。