Cisaraghi

ミスター・サンシャインのCisaraghiのレビュー・感想・評価

ミスター・サンシャイン(2018年製作のドラマ)
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ピョンヨハン目当てにドラマ🈲を破って見始めたが、ビョンビョンとキムテリの冗長な年齢差メロドラマについて行けず、ピョンヨハンの出演部分だけ飛ばし見。しかし、製作費43億円と聞いて現金な私は再挑戦。日本が朝鮮を植民地化する直前の話というレアな時代設定も捨てがたかった。

あらためて観ると、ビョンビョンのアラフォー設定が苦しいというより、実年齢よりずっと若く見えて10代でも通りそうなキムテリが、十分に対等な大人の女性に見えないのがネックかと。そのためビョンビョンの演技自体は悪くないのにロリコンぽく見えてしまってとても残念。そんなキム・テリお嬢ちゃまが三人の男たちにとっての運命の女性というのも何だかアニメっぽいし、そもそも私はキムテリが身分の高い女性を演じることにずっと慣れなかった。
 しかし、二人のラブも無理だけど、大ベテランのビョンビョンと若い二人の俳優という男三人の横並びスリーショットも、上下関係のない男の友情を描くにはいささかキビしかった…。

そんな訳で相変わらずメロドラマ部分には入り込めなかったが、話が主に日本軍と義士たちとの熾烈な戦いに移って緊迫度が増してからは、抗日ドラマとして引き込まれた。キムテリも脱お嬢様化したマニッシュでラフな義士スタイルの方が断然大人っぽくてカッコいい。しかし、エシン君、キミは忍者か…。

抗日ドラマではあるが、この時代の朝鮮の過酷な身分差別による人間の苦悩も大きなテーマとして描かれている。奴婢を殺しても罪の意識さえ持たない両班と、韓国人に対する差別意識を剥き出しにして蛮行を働き、他国の主権を蹂躙しようとする日本人。日本の植民地化政策が、奴婢や白丁に対する差別と同じような、前時代的な差別に立脚したものだったことに焦点を当てているように思った。そして、差別と暴力はとっても仲好し。
 
画面は本当にリッチ、セットとか衣装とかロケハンとか、とことんこだわって作っていることがわかる。眼福眼福、なんだけど、クドンメの造形はちょっとアニメ過ぎないか?こんなカーテンみたいな柄の和服ないわー!こんな真っ赤な男物の着物見たことないわー!髪にウェーブかかってるわー!とついツッコミを入れてしまう。でも、二人で海辺を行く場面は全編中一番のメロシーンだった。
 クドンメについては実在の黒龍会という右翼団体の名前が使われていたため、韓国では親日美化だと批判されたらしい。
 
ヘドゥリオのお二人楽しくて大好き!ピョンヨハンの洗練されたコミカルな演技もお手のもの、さすがは推し!でも、それ以外の定石通りのコミックリリーフ場面は、全体的にちょっとドラマから浮いていてあまり笑えず。三人の中では和ませ役のピョンヨハン、最初はネタみたいだった「僕は美しくて無益なものが好きだ、月、星、花、風、笑い、冗談…」というセリフが、だんだんとシリアスな悲愴感を帯びていくのが何とも切なかった。

しかし、女遊びもそれなりにしたけど、本気になるのは高貴で純潔で志の高いお嬢様、という既視感のある図式。それにエギシ、一人だけ寄ってたかって守られ過ぎでは?という気もするが、エシンの属する徳の高い高氏一族が、朝鮮の人たちにとっての精神的支柱として、いかに人々の敬愛を集めていたかを理解できなければピンと来ないのかもしれない。韓国のお札の顔、儒教学者・李退渓に対する敬慕みたいなものか(知ったかぶり)。

米西戦争に従軍したというユジンのアメリカでの過去も気になる。どうしてあれほど日本語が上手いのか?ユジン、そしてイ・ビョンホン。

この時代の混沌とした朝鮮の状況は複雑で、知らない事柄が多く、とても歴史の描き方を云々は出来ない。朝鮮の人たちにとって、日本人の悪行が大なり小なりドラマ的に誇張して描かれていればいいのだが、歴史は朝鮮がこれ以後さらなる困難な道を歩むことを教えている。そう思うと、何とも辛いsad endingだった。

ヴァイオリンのテーマ曲が印象的。
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