リコ

ザ・パシフィックのリコのレビュー・感想・評価

ザ・パシフィック(2010年製作のドラマ)
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ジョー・マゼロとラミ・マレクが「ボラプ」の約10年前に共演していたドラマシリーズということで、Amazonプライムの期限が切れる前にイッキ見してみた。
マゼロが主演と言うことは知っていたが、ラミの方もどっこい準主演といって差し支えないレベルでストーリーに絡んでくるし、スクリーンタイムも長かったのが嬉しい?サプライズ。
二人の共演目当ての方はEP5のペリリュー諸島篇から見ても問題ない。(というかラミはその回で初登場するので)

ドラマ全体としては、あの東南アジアの焼けつく暑さと湿度、臭い、ハエの羽音までが聞こえてきそうなリアルな戦場こそが真の主役といえる。手足はもげ、血しぶきが飛び、内蔵が散らばるゴア描写も画面のあちこちに見える。いつ終わるとも分からない銃撃戦と、すべてを腐らせていくようなスコールの連続で、兵士たちが正気を次々と失っていく。
マゼロ演じる兵士スレッジは、いかにもひ弱そうな青年で、浜に上陸するボートのなかで聖書の言葉を唱えているような純真な人物として描かれるが、過酷すぎる戦場生活と殺戮のなかで段々と目が異様な座り方をしていくのが痛々しい。
キャリアの長い人だから当たり前なんだけど、改めてマゼロさんの演技巧者ぶりに驚く。これを見た今となっては、ジョン・ディーコンの時の極端な出番の少なさが残念でなりません。もう少し渋さが出てきたら、ぜひともハードボイルドなのを1本演ってほしいわ。(エルモア・レナードの「ラブラバ」とかどうよ?)
で、ラミさんのほうは、反対に?フレディの時と台詞回しの調子が一緒な感じがするし、ぎょろりとした眼の表情はMR.ROBOTの時とあまり変わらない。実在の役のはずなんだけど、当て書きかと思うほど彼のイメージ(サイコパスというか、ニューロティックな人物像)にはまりすぎている。ジャップの兵士の遺体から金歯を引っこ抜いて「これで戦後は金持ちだぜ!」と言ったり、脳みそが吹っ飛んで血だまりになっているジャップの頭に小石を投げ込んで遊んだりとか、ちょっとやり過ぎ感が無くもない。
ともあれ、また10年後には二人には共演してほしいと思う。

他の主役の兵士二人のストーリーについては、別になくても良くない?という感想以上のものが出なかった。メルボルンでギリシャ娘といちゃこらする所とか、女軍曹と出会って浜辺でいちゃこらする所とか全部早送りした。(まあ第二次対戦ものだから男性兵士がメインになるのは仕方ないけど、出てくる妙齢の女性は大概、性欲処理の役目でしかないかったのにはヘドが出る。)
それと、日本の兵士も民間人も、無惨に無個性に殺されていくのには日本人として複雑な思いを抱いてしまった。得体の知れない、不気味でしぶといゴキブリのような、哀れなつり目のサルども。殺され、侮蔑され、あるいは白人兵士のほんの一瞬の人間性を光らせる「装置」として処理されていく。(言わずもがな爆撃された農家の場面)それらの描写や構造が、人体破壊の地獄絵図よりもずっとショッキングだった。
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