ウシュアイア

アフリカの夜のウシュアイアのレビュー・感想・評価

アフリカの夜(1999年製作のドラマ)
4.3
1999年世紀末に放送された隠れた名作。
『魔女の条件』(TBS)の裏番組としてフジテレビ系列で放送されていたため、観ていた人は少なかったのではないか。リアタイで観ていたものの、FODで再鑑賞。


結婚式当日に夫(松重豊)が逮捕されるという決定的な人生の挫折を味わったアラサー※女性・八重子(鈴木京香)が、心機一転江古田のデザイナーズマンション・メゾンアフリカに引っ越しをする。
(※当時「アラサー」というボキャブラリーは存在すらしていなかった。)

メゾン・アフリカには、かつての恋人礼太郎(佐藤浩市)が住んでおり、極度のブラコンの礼太郎の妹・緑(ともさかりえ)が出入りしていた。他に売れない女優志望の有香(松雪泰子)、商店街の弁当屋の親父(國村隼)とその内縁の妻みづほ(室井滋)も暮らしており、八重子は住人達との交流を通じて人生の再スタートを計る。


佐藤浩市演じる礼太郎はいい加減ながらも三人の女性をそれぞれの
関係性で愛する器の大きなモテモテの男。この頃の佐藤浩市はこういう役柄を演じさせたら右に出るものはいなかった。

八重子の再起の物語が中心だが、もう一つの軸が室井滋演じるみづほの話。挫折を味わい不器用にもがく八重子に励ましの言葉をかけたり、礼太郎をめぐって一触即発の住民同士(八重子、緑、有香)を取り持ったりと人情味あふれるキャラクターだが、実は過去に殺人を犯し、美容整形をして逃亡している女性だった。

みづほの時効成立まであとわずかというところでドラマが始まり、逃亡犯の心理(どうやって過去を隠し、そしてボロを出すか)、そして最初は気づかなかった周囲の人間が気が付く展開、密告するか自首をうながすか知らんぷりするかの葛藤、といった濃厚なドラマも展開される。(社会的な影響を考えれば、みづほが逃げ切るという結末はあり得ず、捕まるか時効成立して死ぬかのどちらかだということはすぐにわかるが・・・)みづほ役の室井滋の迫真の演技もみどころ。

また、性悪だけどどこか憎めない役どころの緑を演じたともさかりえも好演。最近本人が当時の演技を見て「下手」と言っていたが、当時の彼女だからできる演技だし、20歳ほどでああいう演技ができた女優がいただろうか?

主題歌はSPEEDのBreaking Out to the Morning で、これもカッコいい。
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