ねまる

ザ・クラウン シーズン2のねまるのレビュー・感想・評価

ザ・クラウン シーズン2(2017年製作のドラマ)
4.4
エリザベス女王として、
君主への成長を、さまざまな出来事から描いたシーズン1に比べ、
出来事、を中心に1話ごと濃密なテーマを描いたシーズン2。

週1の連ドラは前者はいいが、配信系のこういうドラマの紡ぎ方が大好き。
圧倒的世界観で、ブレない軸を作った上で、無駄な説明を一切省いた作り。

だからこそ、回ごとに本当に素晴らしい作品が生まれる。

episode4 "Beryl"
ヴァネッサ・カービー回なんだけど、
この作品のすごく好きな回。愛の回。
当時のイギリス国民と同様に、タウンゼント大佐との恋を見守った身としては、
強さも弱さも知っているマーガレットの乙女心にどっぷり浸かれる神回。
誰もが挙げるであろうだけど、
写真を撮るシーン…神秘的な美しさ。
あのシーンの後の王室の冷たい反応と、トニーのhotな仕草の間で、心躍るマーガレットの対比も面白くて。
彼女の立場になって"enigmatic, sexy, charming, stranger"トニーにメロメロになるも良し、彼女から目線を引いてトニーの意図的なSや、心配する姉エリザベスに目線をを向けても良しな、エピソード。
もちろん、ヴァネッサ・カービーの演技力に酔いしれるのも正解です。

epsode5 "Marionette"
発端はどんなに小さなことでも、それが大きな変化をもたらすことがある。
あくまで変わることを求められた側から観ているからこそ、気付かされるなるほどもあるし、最初の抵抗にも納得出来る。
根幹となるべきものが変わることって、最初は絶対に反対が起きるけど、次第に合わせ変化していくことって必要なんだよねって。
変わるべき伝統と、守るべき伝統とで葛藤するイギリスを見た。イギリスという国を好きになった。
今のままで上手くいっていることを先を見据えて改革するのって、私は気付かないし、苦手だけど、そういう人間に私はなりたい。
強いメッセージ性を持った、ep4とは全く違う神回。

epsode6 "Vergangenheit"
愛の回、変化の回、これは歴史の回だ。
ウィンザー公と過去の最悪な国への裏切り。
このドラマの中でウィンザー公が描かれる時のいやらしさはずっと感じていて、
フィクションでは美化して描かれそうな、愛のために地位や立場を捨てる、という行為を一貫して冷笑している。
その最たるものがこの出来事なのだろう。こんな人絶対に、愛のため?許せるもんか。
元君主のやったこと、何が一番の裏切りだったのかをはっきりし、あり得ないその行為をきちんと描く覚悟。
ep5.6からは強い覚悟が伝わってくる。
この覚悟があるドラマは傑作じゃなきゃいけないんだ。

epsode7 "Matrimonium"
Anthony"tony"・Armstrong=Jones回とせざるを得ない、心のかき乱され具合。
ep5の外部から見る皇室に通ずるというよりは、のちの家族となる彼の内面に切り込む話で、ep4がマーガレットの煌めく恋心視点とはまた違ったトニーの姿。
ナルシストで、堅苦しいことが大嫌いで、プライドが高くて、繊細で、マザコンという複雑さをよく1話で描いたなぁと。
型を破ることで写真家としてのし上がってきた彼が皇室というガチ型に入る、母から認めてもらうただ一つそのためだけに。意外と彼視点のが悲劇なのかもしれない。
クレア・フォイの受賞には納得だけど、ヴァネッサ・カービー"beryl"とマシュー・グード"Matrimonium"がエミー賞取れなかったのは悔しいね。どちらの話でも、互いの複雑さ故に辿り着く絶望と表層の希望のぐちゃぐちゃに打ちのめされる。
この話のタイトルがMatrimonium(結婚/ラテン語)なとこが、結婚式のシーンの残酷さにも思える。
ep5.6の史実に向き合う覚悟とは違うベクトルで、berylが好きなんだけど、その対としてある影として語らなくてはならない話。

episode8 "Dear Mrs.Kennedy"
政界の"女"。
圧倒的男性優位な政治の中で、女が演じる役割とは何なのか。
女王として君臨するエリザベスと、大統領夫人。賢いからこそ、徹底的に演じることで、世間の好感と周囲の嫉妬を買う、女としての難しさ。
お飾り的なものでなく、主役として輝く彼女たちがかっこよかった。

episode9 "peterfamilia"
このドラマの演出をしている、スティーブン・ダルドリー。
彼の映画『リトル・ダンサー』が大好きな私としては、フィリップの子供時代、チャールズが主人公となるこの回は特別。
特に幼少期のフィリップの話が衝撃的で、約2クール通して観てきたフィリップの姿を見直させるような回。子フィリップ役の男の子の生意気さと強さが大好きだった。
1人じゃ何度やっても持ち上げられなかった門。みんなに助けを求めることで、乗り越えられると知った瞬間。
泣けるじゃなくて、震えるだった。
ただ、子供の立場からすれば、大人が必要だと言う苦しみが、本当に必要なのだろうか。それはただの傷ではないのか。大人がかつて必要だったと思うことを押し付けるのは本当に正しいのだろうか。

このキャストが一旦シーズン2で終わってしまうことが惜しい。
最高だった。
ねまる

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