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The OA パートⅡのmajiriのネタバレレビュー・内容・結末

The OA パートⅡ(2019年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

たまに小説を読んでいると、作者が出てきたりする。阿部和重とかよく出てくる。最近読んでたサルバドールプラセンシア「紙の民」もそう。
シーズン1は心理学/カウンセリングの物語。シーズン2は何度も言ってた八岐の園の映像化がされてる。迷路、ゲーム、パズル、家。
・何処かへ行ってしまいたいという衝動、自分を受け入れられないという問題を扱った前回のあと、楽しい異世界へと移動出来たOAとハップ達5人(地下に捕まってたほう)であったが…
という訳でいろいろな世界へ行けてもそこでのしがらみ(柵)は現実と一緒、ってことで普通に苦しむ OA達。

・ブリットマーリングは最後で撮っているブリットマーリングにOAを飛ばす。そこにはジェイソンアイザックがいる。これは俳優である。スタートレックにもでていた彼である。
カリムが自分の世界から(ボルヘスの八岐の園的な家の窓から)別の世界を見ていて、そこが「the OA」を撮っている世界なので、それを観ている視聴者は混乱する。マトリョーシカの入れ子構造のように見える。
自分たちがカリムと同じように観ている「 theOA」のセット?
鏡の中の鏡のように見せることで、視聴者を現実に引き戻す。
5人がいる最初の世界(子供達とBBA)で意識を失ったスティーブも、この世界に駆けつけて「よう ハップ」と声をかける訳で、(かつて庵野秀明がやったような)物語を壊しにかかっているわけではないのだが、この作者が何をしようとしてるかというと、どこまでも「信じる力」を試しているのである。
それはシーズン1の終わりと同じモチーフである。
この自分たちのいる世界も含めて、あなたはこのOAの物語をどう思うか?ということである。
物語内のキャラクターが自分たちの観ている「この世界」に入り込んでくる。でもブリットマーリングもジェイソンアイザックも実際は別の役をやっている。ではこれはなんなのか?というところで梯子外しになる。
・異世界を渡れる女性がハップに途中で語る、女優だった自分がいる世界の話は意味があるのだろう。
ドラマの最後を見ると、皆はシーズン3へ続くか続かないかの問題を語る。シーズンが終わったのなら、この話はそれで終わり。過去の話になる。良かった。名作だ。で終わる。
でもこの多世界を渡れるキャラクターたちは、(物語としては)決して終わらないし、そこを渡っていくのである。人の脳の中に多世界の扉があり、耳から出た花の地図が表していることはそういうことだろう。
・この物語は、村上春樹の二つの世界を交互に描くやり方にとても似ている。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」や「海辺のカフカ」のような。影であるハップは、村上春樹の悪と似ている。
・ハップ、 OA、ホーマーは原始から未来まで続く「火の鳥」の3人のようなものである。
・ボルヘスの八岐の園が現すのは終わりのない迷宮であり、この物語が表現したいのは「終わらなさ」だと思う。
そしてそこを移動するのに必要なのは「信念」なのである。
これは目から鱗だった。
これはとてもよく考えぬかれた多世界解釈のアイデアのひとつ。

・最高に面白いカウンセラーFBIの人は、毎回重要なところに現れてポンといなくなる。
・タコの怪物や、動く植物や、風が囁きかけていたことらへんはラブクラフトを思わせる。
・なんでブリットマーリングはゴールドマンサックスをやめて、異世界や臨死体験や脳、心理学、などの物語を描くのだろう。不思議。
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