イギリス特有の色彩のない空と、陰鬱なストーリーがマッチして、ドラマ全体に独特の仄暗い雰囲気が漂っていた。
「ロンドン・スパイ」は単なる推理サスペンスではない。ごく平凡な主人公が、国家ぐるみの陰謀に巻き込まれ、それでも一心に真実を暴こうともがく姿を描いた人間ドラマだ。
主人公であるダニー役のベン・ウィショーの演技はとても素晴らしかった。
彼は、表情の芝居が上手い。翡翠色の瞳を不安げに揺らし、恋人と話す時は口元を綻ばせる。
台詞が無くとも、微妙な表情の変化ひとつでダニーがどういう人間なのかが、手に取るようにわかる。
後味が悪いわけではないが、最後まで救いのない話である。しかし、自分的にはとても面白かった。