◉柳沢慎吾の素晴らしい演技と存在感
話の中心になるのは三流大学(いまでいうFラン)に通う男子学生(中井貴一、時任三郎、柳沢慎吾)と美人の看護学生(石原真理子、手塚理美)、一流大学だが太目の女子大生(中島唱子)の6人だが、この他に東大卒のエリート(国広富之)とその恋人(高橋ひとみ)のカップル、そして中井貴一の兄(小林薫)と病弱な妻(根岸季衣)らの群像劇になっている。
小学生のお受験はまだなかったが、大学生の“受験戦争“という言葉があり、浪人生のためのマンモス予備校があった時代。
三流大学生の彼らが、就職活動や恋愛に悩み、乗り越えていく姿に共感する若者が多く、人気のサザンオールスターズの曲が多く使われていることもあって話題になった。
自分も、いわゆる三流私立大学を卒業しているので、社会に出てから学歴差別は嫌というほど経験してきたた。しかし、いわゆる上司の立場になれば実力主義で仕事を評価するのが難しいことを実感するようになり、出身大学で評価する学歴社会になってしまうのも理解できる。
脚本家の山田太一にとってはキャリアのピークの時期の作品。
「早春スケッチブック」や「想い出づくり」を同じ時期に書いていたなんて信じられない。
忘れられないシーンがある。
最終回、中井貴一の実家の酒屋に集まる面々。
柳沢慎吾は普段、邪険にしていて散々おごらせていた中島唱子を探しに行く。柳沢慎吾がタコ焼き屋でバイトをしている中島唱子を見つけた時の中島唱子の照れくさそうな表情と、優しい表情の柳沢慎吾の演技に感動してしまった。
このキャスティングでは、お調子者の柳沢慎吾と容姿端麗ではない中島唱子が最終的にカップルになるのは、誰もが予測し、何よりも確実な結論なのだが・・・。
パート2も社会人になった彼らの悩みを的確に描いて傑作だったが、ここでも終盤の見せ場は柳沢慎吾と小林稔侍が和解するシーンだった。
今やバラエティで大活躍の柳沢慎吾だが、もう一度、彼のシリアスな演技が見てみたい。
そのほか、脇役では中井貴一の兄を演じる渋い小林薫もよかったが、何といっても母親役の佐々木すみ江の演技が圧巻だった。この人は本当にうまい。
そして奇々怪々のパート3。
山田太一は演出を批判しているが、三流大学卒でも金持ちになれたバブル期に書かれた山田太一の脚本の内容も陳腐だった。
パート4は見ていない。