ちちうえ

ER緊急救命室Ⅲ <サード・シーズン>のちちうえのレビュー・感想・評価

5.0
「ER」の魅力は救命救急外来を縦横無尽に走り回るカメラワークやリアルな処置の描写などだけではなく、等身大の医師像を描いていることが新鮮だった。

長期に続いたこのシリーズ。全部のエピソードを見たわけではないが自分が見たなかではこのシーズン3がシリーズ最高傑作だと思う。

何といっても最初の6人のキャラクターが魅力的だった。
最初の6人とは温厚で信頼の厚いグリーン先生、女にだらしない小児科医ダグ・ロス、美人女医のスーザン、野心家の外科医ベントン、看護師長のキャロル、そしてシーズン1では医学生だったカーター。

そしてERはカーターの成長の物語でもある。
1は医学生、2はサブインターン、3で外科インターン、その後も様々な経験を重ねて1人前のドクターになっていくがシーズン8でベントンが退職した後はカーターの物語は停滞してしまう。

それと同時にシリーズもマンネリ化。シーズン6以降はレギュラーの出入りが激しく、新加入に魅力的なキャラクターがいない。困るとレギュラーを殺してしまう安易な展開も繰り返されると興ざめしてしまう(ERの平均寿命が異常に短いのでは?)
シリーズ9以降は最初のレギュラー6人のうち残っているのはカーターのみになり、風船がしぼむ様につまらなくなっていって、現在の「ウォーキング・デッド」のような状態になってしまい淋しい終了になってしまった。


そんな中、自分にとってシーズン3が最も魅力だと感じる理由は、レギュラー陣の多くがプライベートや医師としての大きな分岐点を迎えるシーズンであること、そして多数の印象的なエピソードと豪華なゲスト出演者にある。



★まずはレギュラー陣
グリーン・・・長年連れ添った奥さんと離婚し、スーザンもERを去って、シーズン終盤では暴漢に襲われるという悲劇に見舞われる。
ロス・・・貧民街の不遇な少女チャーリーとの交流もあるが、元恋人のキャロルと再びいい雰囲気になっていく。
スーザン・・・グリーン先生の想いを振り切って退職
ベントン・・・恋人の出産で父となるが子供が障害を持っていることが判る。小児外科の手術ではミスしてしまう
キャロル・・・医大予備校に通い始める。輸血の間違いで停職中にコンビニ強盗に遭う。
カーター・・・無事ドクターになったがまだまだ新米、同性愛者のライバルのマギー、そして親友デニス・ガントの悲劇的な死、小児外科キートン先生とのロマンスなど波乱万丈。

そして、新たなレギュラーとしてAIDSの美人ドクターアシスタントのジェニ・ブレ、ガチガチの管理職のウィーヴァーも登場。


★印象的なエピソードと豪華なゲスト
コンビニ強盗役はなんと「トレインスポッティング」「スター・ウォーズ」のユアン・マクレガー
貧民街の少女チャーリーは「スパイダーマン」のキルティン・ダンスト
医師アンナ・デル・アミコ役は「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「サンキュー・スモーキング」のマリア・ベロ(次シーズンではレギュラー)
小児外科医アビー・キートンは「ディック・トレーシー」のウォーレン・ベイティの恋人役のグレン・ヘドリー


★サブのキャラクターを演じている俳優も何気に豪華
外科部長モーゲンスタインは「ファーゴ」などの名脇役のウィリアム・H・メイシー
外科のヒックス先生「バクダッド・カフェ」のCCH・パウンダー
デニス・ガント役は北野武の「Brother」で主演していたオマー・エップス。
カーターのライバルのマギー役は「CSⅠ」のジョージャ・フォックス、


ちなみに自分は無名だけどERの受付の独特なファッションのヤンキー風のランディのファンです



日本のテレビに出てくる医者は「絶対に失敗しない」とか、チンピラみたいな態度の一匹オオカミでいつ勉強しているかサッパリわからないけど若くしてゴッドハンドになっているというスーパードクターばかり。
比較的、クオリティが高かった「白い巨塔」でさえ、野心の塊の天才外科医の財前五郎や無欲で誠実すぎるほどの里見修二のようなステレオタイプの医師像だった。

フィクションのドラマとしては面白いのかもしれないがリアリティなさすぎ。

実際の医療現場には天才外科医なんかいない。他の人より少しだけ手先が器用だったり、ちょっとだけ記憶力が良かったりする普通の人がカーターのように、簡単な処置を数多く経験し、ミスしてつまずき、努力して少しずつステップアップして、やがて周りのスタッフや患者さんから信頼を得て、さらに人生経験を積み上げて成長していき周りから高い評価が得られる。若手の医師も努力すれば自分も尊敬する先輩医師のようになれるかもしれないと思うから切磋琢磨する。(血のにじむような努力とは無縁の天才外科医から得るものはほとんどない)

ミスを犯さない人間などいないのに・・・。
ミスを犯さない人間しか医師になれないなら誰も医師を志さなくなってしまう。

そういう意味では現実では絶対にありえない設定のスーパードクター主人公にして医療問題を提起した「ブラックジャック」を描いた手塚治虫は天才だった。

U-NEXT吹替で鑑賞