Mayo

13の理由 シーズン4のMayoのレビュー・感想・評価

13の理由 シーズン4(2020年製作のドラマ)
3.5
終わった。終わってしまった。30代にしてお恥ずかしながら、このシリーズかなりハマっていたので寂しいです。

ファイナルシーズンはとにかく悲しすぎたよ。最後くらい誰も死なないで欲しかった。最後の最後に、どうしようもない、誰がどうすることもできない死を持ってくるなんて。悲しい。悲しすぎる。最初からお葬式のシーンを入れてるので、誰か死ぬんだなっていう心の準備をさせてくれたことだけはありがとう。

これまでのシーズン特にクレイがモノローグだったことはなかったけど、クレイのモノローグで始まった時、心地よさとこれこれって感じがした。改めてクレイが主役なんだっていう感じがして、始まりとしては良かった。
全体としては、これまでのシーズンのように過去と現在を交差させるやり方でなく、シーズン3でみんなが抱えた秘密が暴かれそうになり、犯人は誰だ?というのを、ミステリーというよりホラーのような怖さで描いていく。これはイマイチいつものテンポに欠けたと思う。

秘密を抱えた彼らはそれぞれに耐えられない日々を送っているけど、特にクレイが壊れすぎてつらい。見ていられないし、クレイとセラピストの先生との対話シーンが多くなってくるのでやや退屈だし、もう少し早く立ち直って欲しかった。
友達思いで信念を曲げず、みんなのリーダーの様になっていたクレイが、それを取り戻すか、もしくは逆にみんなに救われるか、どっちかして欲しかったな。
それが後半の「死」により全てうやむやに。
ジェシカやジャスティンも死人たちの幻覚を見ているし、それぞれに問題を抱えているのに、それをお互いにシェアしない。みんなで乗り越えてく姿が見たかった。

シーズン2, 3であったようなクレイとジャスティンとのかわいいやりとりもほとんどなく。とにかく2人は自分のことで忙しそう。心なしかジャスティンの服装がクレイ寄りになってたのが唯一のほっこり。
かわいさはチャーリーに行き、ほっこりタイムはチャーリーとアレックスへ。シーズン3のラストで秘密を共有したメンバーの中になぜかチャーリーが入ってて、誰感満載だったチャーリーを、あんな魅力的なキャラクターに仕上げたのはすごい。
シーズン3ではちょい役のウィンストンも、リバティ高に転校してきて真相を明かそうとする。ウィンストンは美しすぎて主人公たちと敵対する役なのにずっと見ていたい感じ。モンティとのダンスはきゅんきゅんした。敵役にも感情移入させられるのはドラマとしていいなと思う。
このシリーズ、卒業によるキャストの入れ替えがさりげなく、非常にうまくいっていると思う。

クレイって、シーズン1からずっと死人の姿が見えていて、単に頭の中の姿なんだと思っていたけど、最初から精神的におかしかったのかな。
銃乱射のとき、クレイの両隣にブライスとモンティは笑えた。展開見えてたけど、学校としてはありえない!
そして生徒たちの暴動。10代で見てたら彼らに気持ちを代弁してもらったような、すっきりした気分になっただろうな。
パーティでクレイがザックのピアノ伴奏に合わせて歌うシーンも好きだった。
アメリカの青春の最高潮、プロム。ここまで生き抜いてきた彼らに泣けた。ジャスティンの登場が最高にかっこ良かった。

シリーズを通して、1人の自殺が周りに影響する最大の悲劇を、リアルに描いてくれた貴重なドラマ作品だったと思う。自殺、レイプ、いじめ、差別、LGBTQ、SNS、精神的な病…挙げたらキリがないほどたくさんの社会問題やトピックを扱った。そしてファイナルシーズンでは、セラピストの先生や保安官たちを通して、大人たちは意外とちゃんと見ているよというメッセージも。

本当にすごい作品だと思う一方で、終わり方はすっきりしなかった。
コートニーとライアンのゲスト出演と、ハンナの姿が見えるのは良かったけど、あそこでちゃんとクレイとハンナの決別というか、クレイが一歩進んだ感じが欲しかった。
彼らの未来は、辛そうだ。シーズン2から友情が進化していないし、2くらいの頃が美しかった。シーズン3で秘密を共有してしまい、そこからもう一歩、ラストに向けて進んで欲しかった。
罪を償うべきという意見が多いけど、たしかに、若い世代に向けてこれだけの問題を扱いながら、なぜ?とも思う。罪を償うより、AIDSの啓蒙のが本当に重要だったのか?
ただ、罪を償う場合のドラマを想像すると、果たしてそれはドラマとして面白いのか?そのドラマはどんな希望で終われるのだろうか?と思う。
罪を償わず、心の中に留めて、少数の友達としか共有できない。その辛さを抱えて彼らは生きていく。殺人の隠蔽を正当化しているわけではなく、そんな風になってしまう悲劇が、1人の自殺から、学校生活の中から生まれてしまうことを描いているのではないかな、と私は思う。
でも、スピンオフなどで彼らのその後をぜひ描いて欲しい。こんな辛い学校生活を送った彼らが、どんな大人になるのかはちゃんと見たい。

見終わってしまったのが寂しすぎて終わった瞬間に、シーズン1を見直し始めてしまった。シーズン1とファイナルシーズンで敢えて重ねて撮ってるカットがたくさんあった。トニーの車で終わる最後も、そういえばそうだったね。
シーズン1の時は、学生たちの気分で見ていた私も、今じゃ親の目線で見ている。クレイのお母さんの気持ちになると、本当辛すぎて、自分だったらどうするだろうと考えてしまう。振り返れば、私の中学〜大学くらいの頃までだって色々なことがあった。リストカットの跡をつけている子だっていた。スクールカウンセラーの部屋に友達を連れて行ったこともある。私も、suvivorの1人。私の子供達にこの先どんな試練が降りかかってくるのかと思うと、涙が出る。生き抜けます様に、と願うばかり。


最後に。
6月5日に配信開始だったけれど、アメリカはブラックライブスマター運動の真っ最中。私は俳優さんたちのインスタを見るのが好きなので色々見ていたら、ほとんどの人たちが番宣しないでBLM運動についての発信をしていた。ドラマの内容自体もかなり重いし、彼らは恐らく全身全霊で作品を作ったはず。それについて何も触れないでBLM運動に注力していることが、アメリカの若い俳優さんたちの社会問題や政治への意識の高さに感心すると同時に、これはただごとではないことが起きているのだなと思った。

シーズン3からは失速してしまったなーと思うものの、若い俳優さんたちは本当に素晴らしかった。彼らにまた当たり役がきて、またどこかで何かの作品を目にできる日が来たら良いなと思う。楽しみ!
Mayo

Mayo