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13の理由 シーズン1のGKのレビュー・感想・評価

13の理由 シーズン1(2017年製作のドラマ)
4.2
遅ればせながら、Netflixオリジナルドラマ『13の理由』(シーズン1,2)を見終わった。 ※点数はシーズン1の点数


『13の理由』は、高校生のハンナ・ベイカーが自殺した2周間後から話が始まる。
彼女の友人の、クレイ・ジェンセンは彼女が「死ななければならなかった理由」を録音した13のテープを受け取る。
シーズン1は、テープの内容に沿ってハンナが死ななければならなかった理由を解明していくもの、
シーズン2は、ハンナの死に関しての彼女の親と学校の裁判を基軸をとして、ハンナの周りの人々の心情の変化を描いたもの、である。

ストーリーだけ聞くと、学校の道徳の授業で見るような教育ドラマを想起させるが、
脚本がうまく(ハンナの死の謎の解明の過程、その内容、ハンナの友人の心境の変化など)、飽きさせない構成になっている。

ただし、ハードであることは断言しておきたい。
今まで見たどんなものよりも「心がえぐられる」ドラマだった。
何もそこまで、と思うこともあるが、現実を伝えるための表現として必要だったと制作陣は言うだろう。
嫌というほどリアルなドラマであるからこそ、追体験の現実感が強く、そのメッセージが鑑賞者の頭に残る。
とにかくえぐられるので(特に、各シーズンの後半)、心身ともに健康な時に見た方がいい。


良くも悪くも賛否両論が議論されている作品で、自分もまだ胸の中のざわついている状態である。
様々なテーマ性を持っている作品だが、それを全部書いていると長くなってしまうので、自分が感じた「メッセージを(あえて)全面に出したこの作品が、何を伝えたかったのか」を書きたいと思う。


それは「思いやり」である。

それだけ書くと、なんだそんな単純なことか、と思われるかもしれないが、その大切さが痛いほど伝わってくる。
思いやりと言っても「教科書を忘れていたら見せてあげる」「体調が悪そうだったら保健室に連れて行ってあげる」といった表面的なものではない。

ここで言う「思いやり」とは、「相手の心に寄り添うこと」である。

『13の理由』に出てくる高校生は、ハンナも含めて皆何かしら傷や悩みを抱えている。
自分の傷や悩みに対処するのにいっぱいいっぱいになって、知らず知らずのうちに他人を傷つけてしまう。
また故意に人を傷つける悪意の人も存在する。狭い世界の中にいるからこそ持ち得る薄っぺらい万能感によって、簡単に他人を傷つけてしまう。
ハンナはそうやって抱えた傷が大きくなってしまい、戻れなくなってしまった。

どこかのタイミングで、誰かがハンナの心情を想像して理解を示し、寄り添ったのであれば、彼女は命を断つことはなかっただろう。

誰しも自分がかわいくて、自分に対処しているときは他人への想像力、寄り添う姿勢が減ってしまいがちだ。
ただ、少しでも、少しでもいいので、自分のまわりの人が何を考えているのか想像することができれば、救われる人がいる。


少し前に、こんなことがあった。少し、個人的な話を。

私の祖父は認知症を患っている。
私も含めた孫の名前、何人の孫がいるかさえも覚えていない。
食事などの生活の基本動作は覚えているものの、10秒前にした会話の内容を覚えていない。
そのため、何度も同じことを聞いてくる。
「○○(私の父、祖父の息子)はどこに務めちょるのかね?」
その度に父は「○○だよ」と答える。父は、次第にうんざりしたような表情、声になる。

私はどうしていたかというと、そうやって同じことを聞かれるのがわかっているので、祖父の近くにいることを避けていた。
「その方が、お互いにとってよいに違いない」、そう勝手に思っていた。

その後、東京に帰ってきたのだが、その時の自分の姿勢に、違和感が拭いきれない。
「逃げていただけではないか?自分のことしか考えていなかったのでは?」

ぶらりとよった本やで『認知症の人の心の中はどうなっているのか? 』という本を見つけたので読んでみた。

”まずは自分が何者かを伝えたり、わかりやすい言葉を使ったりして認知症の人のストレスを軽減し、安心できるようにする。
その上で、相手が話しやすい話題を選び、水を向けて発言を引き出し、その場にいるのが楽しいと感じられるようにするといいでしょう。”

”「おかしな人だな」と思ったあとで、「当たり前でないことが起こっているのは、何か事情があるんだな」と、思ってみてほしいのです。それが、認知症の人の苦しみを共有する第一歩です。”

自分の祖父への姿勢を反省した。

次に行ったときには「どういった思考回路なのかを理解し、その場を楽しめるような会話を作ろう」そう思った。

この書籍は認知症の人との関係性を考えるための本だったが、どんな人であっても、病気を患った人にもそうでない人にも、向き合う上でも必要な姿勢を教えてくれた。
自分と100%同じ思考回路を持つ人はいない。だから「相手の心の世界」に目を向ける姿勢はとても重要で、たとえ自分が理解できない言動や行動を相手がとったとしても「その裏にはどういった考え、感情、事情があるのか」を考えてみる。

つまりは、コミュニケーションする相手への「(相手に対する)想像力」がとっても重要ということ。

それは『13の理由』が私に教えてくれたことと一緒だった。


冒頭に書いたように、見るのに体力が必要で、決してポテチとストロング0と共にリラックスして見る作品ではないけれど、多くの人に見て欲しい。
そして一人ひとりの「思いやり」が少しでも増えれば、と思う。
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