やんやん

13の理由 シーズン1のやんやんのレビュー・感想・評価

13の理由 シーズン1(2017年製作のドラマ)
4.5
『いじめはいじめる側が100%悪い』
こう言い切ったことはあるだろうか?
誰しもいじめられる側にも問題があるのではないかと考えてしまうものだ。

最初に。
出来が完璧に近いと思う。
何が完璧かって?
人間描写だ。
その上観る人に非常に分かりやすく仕上がっている。
映像も美しく、音楽も素晴らしく、その魅力を引き立てている。

このドラマが社会的な影響力をもったのはなぜか。
誰しもいじめたくていじめてるわけではない可能性があること。
本人が無意識のうちにいじめに参加していた可能性があること。
そして誰しも加害者にも被害者にもなる可能性があるということ。
これらを痛烈に風刺しているにも関わらず強い共感を得るからだろう。

このドラマの手法が新しいのは、全て主観で話が進行していくことだ。
いじめを取り扱うとどうしても暗く陰鬱になるのは仕方ない。
しかしそれを客観的に俯瞰していては、自殺した彼女がなぜそこに至ったかは本質が見えない。
ハンナの独白に付き合わされるというスタイルが胸糞悪く、クレイのちんたら1本ずつ聞くのにも心底うんざりさせられる。
しかしそれがまたこのドラマの秀逸なところなんだと思う。
主観的な内面をこれでもかと見せつけるためにあえて時間をかけているのだ。
このドラマを最後まで見てハンナやクレイに同情するだけの人がいたら、その時点であなたは薄っぺらいと言われても仕方がない。

それぞれが強烈に個性的なキャラクターたち。
だけどそれぞれが現実世界に確かにいそうな高校生たちだ。

個人的にずっと好きだったのはジャスティン。
ハンナやジェシカに対してやってしまったことは確かに悪だけど、彼がクレイを止めようとした動機はジェシカを守るためだというのは、本人の告白の前から感じていた。
そしてトニー。
彼は本当の意味でクレイの友達だ。
いざという時に守ってくれないやつは友達とは呼べない。
あとはザック。
忘れてた、最後にハンナ。
思考が身勝手なタイプだけど、彼女はとにかく可愛いし、多くの女性ってそんなもんなんだと思う。
でもテープの登場人物からしたら本当にあいつ勝手に死んでおいておれらのせいにすんなよ、ぐらいな気持ちであろう。

逆に嫌いなタイプ。
クレイはとても嫌いだ。
細かいことはいい、13人の中で最も相容れないかもしれない。
なんでこんなにも嫌いなのか、自分の学生時代そのまんまだ。
昔のダメダメだった自分を見ているようで辛すぎる。
だから嫌いだ。
それに気づくのにかなり時間がきかったけど。
結局1番嫌いなのは自分のダメな部分で、他の誰かのようになりたいとみんなが思っている。
次点はほぼ同点でジェシカとコートニーとマーカスだ。理由は割愛。
ハンナの母やポーター先生も大嫌いだ。
あんな大人が多いから思春期の子供たちが傷つくといっても過言でない。
あえてブライスは外しておく。
最悪な男であることは確かなのだが、やることが下衆というだけで性格まで嫌いなわけではない。

こうやって普通は自分の好きな人とは仲良くなり、嫌いなやつとは距離を置いていく。
学校という集団の中でそういうことを学び組織は出来ていく。
被害妄想だけでは何にもならないんだ。

でもね、困っている人や辛い思いをしている人、悩んでいる人がいたとして、その人に手を差し伸べないやつは最低だ。
気付かないことも多い。
それは気づく努力をしていないから。

みんな誰しも悩みを抱いている。
自分よりもさらに大きな悩みを抱えている人が身近にいると考えたことはあるだろうか?
そんな人がいたら助けてあげたいと思ったことはあるだろうか?

冒頭に戻る。
ここまで書いたことは、いじめはいじめる側が100%悪い、というのと矛盾しているようだ。
でもね、いじめていたという事実を受け容れることから始めようって意味が含まれているとしたらどうだろう。
クレイがそうしたように、受け容れるのはとても怖いことだけど、そこがスタート地点なのだ。

青春も青春、誰しも通った悩み多き青春。
このドラマを今まさに青春を生きている人たちに見て欲しいし、大人たちはこれを見て経験者としての義務を果たしてほしいと思う、自分も含めて。

ありきたりで、1番大切なことを訴えているドラマだと思います。
やんやん

やんやん