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13の理由 シーズン1のgregのレビュー・感想・評価

13の理由 シーズン1(2017年製作のドラマ)
5.0
Why didn't you say this to me when I was alive?

謎の自殺を図った女子高校生が「彼女が自殺した理由」を語った7本(13面)のカセットテープを中心においた、ベビーでリアルなカミングオブエイジ。今年最もSNSを騒がせたテレビシリーズで、その過激な描写が各所で論争を呼び、ティーンエイジャーにこの作品を観せるべきではないとする大人たちも多くいる。ただし日本以外では…

と皮肉まじりに書いたのは、決してこの中で描かれていることがいわゆる「アメリカ学園もの」を見たときに僕たち日本人が感じる"憧れ"なんかを抱かせるものではなく、むしろ日本の現状と非常に密接した物語だからだ。遠い海の向こうの話なんかではない。

自殺した美少女のカセットテープを一面ずつ=1話ずつ聴いていくことで明らかになる学校という世界。個人的な話をすると、自分は3月31日の配信から3日以内にこの作品全13話を完走した。いわるゆビンジウォッチングと呼ばれるこの手法で観ていくと、リアルタイムのすさまじい興奮を味わえる。特に、初っ端から存在が宣言された主人公クレイのテープがいつやってくるのかという恐怖と高揚感の入り混じった感情は忘れられない。

物語の方に話を戻そう。冒頭に書いた「どうして生きてるときに言ってくれなかったの?」この言葉こそが13話全体の中で最も重要だと思っている。不可逆で不変な一度起こってしまったこと、もう無いものへの妄念にとりつかれた少年へ向けたこの言葉は、これ以上ないほど核心をついた死にたくなるようなものなのだけれど、同時に救いにもなっている。真実だけが、少年を救うことができる。

真実とは…自殺した少女は生き返らない。

そうだからこそ、これからは…もっと、もっと何かができるはず。主人公クレイはハンナのテープの中の少年ではない。

We can try…

過去をしっかり踏みしめながら、今自分にとって何が目の前にあって何が大切で何ができるのか。今度はもう2度と…


追記
先ほど書いたように今作はネット上で火がつきあらゆる場所で論争が起こった。それと同時期にLogicというラッパーが1-800-273-8255という曲をリリース、大ヒット曲となっている。この長いタイトルはアメリカの自殺防止ライフラインの電話番号をそのままとっている。歌詞も、もう生きていられないと語る青年を描く。この曲のヒットと『13の理由』のヒットが関連しているかは不明だが今年自殺というテーマを扱った2大作品であることに異論はないと思う。

正直内容的にはあまり共通点が見られず、その評価も2作で大きくわかれている。(『13の理由』は腫れ物に触るように扱われる一方、Logicの曲は多くの命を救ったとして賞賛され、VMAのパフォーマンスでさらにチャートの順位をあげている)

だからこそ言いたい。Logicの1-800は多くの命を救えるだろうし実際に救ってきた。でも、たぶん世界を変えられるのは『13の理由』

現役の学生だけでなく親世代こそ観るべきドラマ。なによりめちゃくちゃおもしろい
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