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愛していると言ってくれのemiriのレビュー・感想・評価

愛していると言ってくれ(1995年製作のドラマ)
5.0
驚異の視聴率を取ったドラマ。障害者との恋愛と言う、非日常的ゆえ一見感情移入できなそうなこのドラマは、恋愛ドラマとしてみた場合に、普遍性をもつ、より高次のドラマだったことがわかる。
男性の不能性を欲望するのは女性のヒステリーの感情だし、出ない声を出してくれという不可能な要求は、ヒステリーの欲望のように見える。
でも、ラストまできて、この、これまで相手をむしゃぶり尽くすようにきたひろこは、背伸びしてこうじが手に入らなくて苛立っていたひろこは、自分という支えを手に入れ始める。
こうじが聞こえない声を響きとして聞かせてほしいというシーンは、恋愛ドラマとして至高のものだ。ひろ子が、出せない声を出してほしいというヒステリー要求と異なり、聞こえないからこそ、その声を別の形で記憶し再現しようとする。それは、芸術と同じ行為。人を描けなかったこうじが、ひろ子を描こうとしたことと等価の行為。ここでは、通常の正常-異常の線引きはひっくり返る。
耳が聞こえないのと聞こえるのとどう違うのか、あなたをわかりたいと迫ったひろ子への、昇華された次元での応答。
金色の海に裸でたたずむ二人は、障害という正常性を超えた次元を象徴している。
途中で、ひろこはただのよろめきドラマか(しかも二回)と思ったり、光が力づくで奪ってほしいとしたやり取りはすごく古い気がしたんだけど、最後まできてドラマの力強さ、二人の成長は眩しかった。
りんごの反復のシーンは素晴らしい。
ただ若さゆえがむしゃらなひろこと、希望と夢を失い続けなくなったひろこ。
こうじの声をこれまででもっともいとおしい声だとひろこが語るシーンは素晴らしい。その、こうじの肉声も素晴らしい。電車が通りすぎるシーン。
ひろ子が健ちゃんと一緒にいるとき、手が震えて手話をしていたという設定も素晴らしい。あんなに、手話に疲れた、嫌だと言っていたひろこ。手話は、ここでは、愛のコミュニケーションの象徴となっている。
人差し指と人差し指をくっつけていく動きの手話はとてもエロティックだ。
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