なっこ

僕らは奇跡でできているのなっこのレビュー・感想・評価

僕らは奇跡でできている(2018年製作のドラマ)
3.1
最近購入した本に引用されていた名言がぴったりのドラマだった。

人生にはふたつの道しかない。
ひとつは奇跡などまったく存在しないかのように生きること。
もうひとつは、すべてが奇跡であるかのように生きること。(アルベルト・アインシュタイン)

この物語は、もちろん後者の道を生きる者のお話だ。
“変わっている”の一言では片付けられない性質を持った主人公だけれど、焦点は現在の時間の流れに当てられているので彼を取り巻く状況はすぐには分からない。どんな生い立ちなのかどんな家族構成なのかは、徐々に明らかになっていく、そのスローなテンポが良かった。
何より、彼を理解して支えてくれる家政婦の山田さんや、上司の教授、陶芸家の祖父が素敵。
特に祖父の言葉は、子どもだったかずきにもわかりやすい分、本質的で素敵なアドバイスだった。良いセリフに私自身たくさん力をもらった。

この物語は特に、父性の働きがうまく機能しているように見えた。祖父はかずきに自由に生きられる森を与え、教授は仕事という活躍の場を与えた。ふたりは大きく温かな視点でかずきを見守り、社会的な成功へと導いていく。
すごいことをしなくちゃと、いっぱいいっぱいになったかずきを解放して、自分は“居てもいい”存在なのだと実感させた話を語るかずきの長ゼリフは、涙なしでは見られなかった。

「やりたいならやればいい、やらなきゃって思うならやめればいい」

孫としてのかずきの存在をまるごと受け止めて、人間万事塞翁が馬とばかりに、価値を転換させていく視点を与える。その距離の取り方は、親と子ではなかなか難しいものなのかもしれない。

また、最終話で教授がかずきのいつも持ち歩いてる缶を引き合いに出して、学生たちに誰かと比べるのではなく、そのままの自分を活かしきることの大切さを暗に示すところは、とても素敵だった。このメッセージが大きなテーマだったように思う。

自分のしたいことをする、熱中できることを持つこと、そしてそれが独りよがりにならないようにすること、そのバランスは実社会ではとても難しい。でも、やらなくちゃではなくて、どう自分を活かして生きるのか、あなたは変わらなくてもいい、そのままの君に本来価値があるはずだ、というすべてをくるんで大きく受け止めるような大きな優しさをこのドラマからは感じた。現実はきっと、こんな風にはいかない。だからこそフィクションで柔らかく美しく簡潔に描いていく必要がある。見ていてとても清々しかった。

良いドラマでした。