きの

NIGHT HEADのきののレビュー・感想・評価

NIGHT HEAD(1992年製作のドラマ)
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飯田譲治監督作品(らせん)が結構好みだったのと、90年代の表現に興味があって視聴。

フィクションに救いや正解、ライフハックが求められる昨今の作品とは異なり、SF/ホラー的なアイデアを1話23分の1話完結方式で視聴者に投げつけてくる。物語の中で解決されない感情が余韻となり、考える余白や印象深さを残す。

自分の能力を社会のなかで活かせない・活かし方がわからないことへの苦悩、社会に受け入れられない孤独・悲しみ、社会の不寛容さへの怒り・憎しみなど、超能力がなかったとしても感じるような青年期の普遍的な心理的問題を扱いつつも、SF/ホラーテイストで緩和されるので深刻になりすぎずに観ることができた。

あまり思考実験的な内容に走りすぎず、登場人物の内的な葛藤の描写に走りすぎず、TVのエンターテイメントとしてちょうどいい塩梅のように思った。



エンディングのスタッフロールで流れる呪術的に反復する音楽好きです。



飯田譲治作品!という印象が強いが、21話中脚本15話、監督4話の参加なので実は色々なテイストが楽しめる。

印象深い回

#3 Fake 偽物
脚本:高山直也 演出:土方政人
夜の高架橋、赤い電光掲示板の前に佇む兄弟のシルエット。「俺をひとりにしないでくれ、今は」

#10 Prophecy 預言
脚本:笠井健夫 演出:土方政人
サラリーマンをしながら予知能力者として活躍するカミヤという男について聞かされた霧原弟の「普通に働いて!?」「そういう人もいるんだね…」という反応が面白い。自分の、能力に振り回されるだけの生活と比べてしまっているのかな、と切なくなる。

#12 Apartment
脚本:高山直也 演出:落合正幸
異様な雰囲気。ウシジマくんの世界に予知能力者がいたら。
神棚に供えられた捩れたスプーン。
冒頭の、白いワンピースの女の子が手を差し伸べながら地下鉄の階段に少しずつ消えていくシーンが喚起する不吉な予感。
開けっ放しのアパートの扉から覗き見ることができる他人の生活は、そのままそこに住む者の業を思わせて吐き気がする。
アパートはロケ?どこなんだろう。

#14 Shadow 影
脚本:笠井健夫 演出:本広克行
スピード感がすごい回。トランジションが風変わりで面白い(左斜め下から波のようにワイプが押し出されてくる)。音楽もいきなりクライマックス。兄の力の悪の側面を引き出すメフィストフェレスのような松重豊が魅力的。

#21 The Ark 方舟
脚本・監督:飯田譲治
ドロドロに溶けた神経がPCと繋がってネットワークに入り込んでるイメージがおもしろい。やっぱり飯田譲治監督でループも観てみたかった。ナイトヘッド2041を観るに、アニメでならできるのでは?などと思ったり。
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