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ゲーム・オブ・スローンズ 最終章のdojiのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

全編を通して、ふたつのロイヤリティ=Royal/Loyalについての話として観ていた。生まれ持った血とそれが辿ってきた罪や時間を背負いながら生き方を選択するというRoyalityは「持てるものたち」のストーリーとして、そして騎士という伝統の名のものとに忠誠心に命を捧げるLoyalityは「持たざるものたち」のストーリーとして。

それはそのままはっきりと貧富の差によってどちらを辿るのかが決められてしまうのだけれど、その間の存在としての落とし子や近親相姦による子どもといった複雑な設定が、ものがたりをより人間らしく、業と高潔さを際立たせるものにしている。時代設定といいファンタジー的なモチーフに溢れたシリーズだけれど、とにかく人間を描くことにおいてこんなに徹底していてかつ優れたストーリーはないだろうなぁとは思う。

最終章に関してはものすごくバックラッシュが起こったということだけれど、はっきりとそれは希望をみたかったひとたちによるものなんだろうなと思う。あるいは慈悲とも言えるかもしれないけれど、このシリーズはとにかく善悪問わず人は殺され、正義というものはかなさを観客は思い知らされ続けてきた。だからこそ、持たざるものたちによる信念に感動してしまうのが、このシリーズの最大の魅力だとぼくは思うのだけれど、リーダーシップや父性なき時代のいま、オーセンティックなRoyalityをものがたりに求めるのはとてもわかるし、もっともシーズンを通してほんものであることを示し続けてきたデナーリスのあの選択に納得できないというのもわかるにはわかる。けれど、このものがたりで持てるもの側で筋を通せたのは結局ジョン・スノウぐらいなもので、そんな彼がまた名もなき存在へと戻っていくのも、このものがたりの帰着点としてもぼくは納得できた。

とはいえ、ぼくとしても気候変動のモチーフとも言われるホワイト・ウォーカーたちとの戦いを経て、結局はまた王位争奪戦に立ち戻っていき、それも最悪な結果で終わるというのは、大義のために剣を交えたものたちがひとつになるという美しいストーリーを台無しにしているようにも感じてしまったけれど、結局のところ、言ってしまうと人間なんてそんなもんなんだというつくり手の思想そのもので、ぼくもはっきりとではないにしろ、共感してしまったのが正直なところ。人は忘れ、間違い続けるものだと思うし、だからこそすべてを記憶するブランを王にしたティリオンが語る「物語」や、ブライエニーがジェイミーのものがたりをページに刻むことで、このシリーズを終えたのだろうなと思う。あらゆる膨大な争いを経て、弱き王によって持つものと持たざるものたちとともに生きる社会をつくるということ、そして別の世界の可能性へとアリアが旅立っていく。この結末は希望だとぼくは思った。
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