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獣になれない私たちのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

獣になれない私たち(2018年製作のドラマ)
4.8
IT企業の営業アシスタントとして働く深海晶(新垣結衣)は周囲から笑顔の明るさを評価される女性だが、社内で営業担当のミスのカバーに奔走させられ、ワンマン社長の九十九剣児からは理不尽な責めを負うなど悩む日々を送る。またプライベートでは複雑な家庭の事情で母親と縁を切って生きており、大手デベロッパーに勤めている恋人の花井京谷(田中圭)とは交際4年に至るが、その仲に問題を抱え結婚には進めない。彼女が行きつけのクラフトビールバー「5tap」(ファイブタップ)では、同じく常連の会計士・根元恒星(松田龍平)が恋人と思っていたデザイナー橘呉羽(菊地凛子)から別の男性との結婚を告げられる。晶と「5tap」で偶然出会って顔見知りとなる恒星は、彼女の笑顔を「嘘くさい」と評する毒舌家だった。ある日、晶は仕事上で取引先からまでもパワハラ・セクハラに晒されて精神的限界に達し、「5tap」でも笑顔を見せられない。その様子に気付いた恒星は晶と初めてまともな対話をする。恒星の「バカになれたら楽なのにね」という言葉に前向きな気持ちを得た晶は、翌週呉羽を意識した迫力あるファッションに身を包み出社し、九十九に対し自身の業務内容の改善を要求して周囲をおののかせる。一方、晶の周囲の人物たちもそれぞれに問題を抱えており、京谷は別れた後も自宅に居候させ、無職の引きこもりと化した元彼女の長門朱里(黒木華)を追い出せず晶との関係を膠着させ、京谷の母・花井千春は寝たきり状態の夫の在宅介護に拘るあまり同居する息子夫婦との関係を悪化させ、恒星は兄を借金問題から助けるため秘密裏に不正な税務処理に手を染めていた。様々なものに縛られ、自分に正直になれない人々の明日は?
周りの期待に応え平和を崩すのが怖くて仕事の分担を頼めなかったり上司からの自分の職務外の無茶振りを断れなかったり、無職になった自分の元カノを自分のアパートを追い出せない、自分の兄貴を助けるための金を稼ぐために請け負った汚い仕事を断ち切れない、自分の本音は言えないけど他人のことを分析して余計なことを言ってしまう。自分の本音や気持ちより周りの調和を維持することや周りの期待に応えることを、優先してしまう。自分の本音や要求を出しても、上手くまるめこまれたり、自分の本音を上手く伝えることが出来なかったり、自分の本音や気持ちに素直になれない。
そんな「獣」になれない晶や恒星や京谷が、葛藤や苦闘しながら、自分の本音や気持ちに素直になっていく成長物語が、リアルに描かれている。九十九のパワハラや無茶振りに疲弊して晶の心が壊れそうになるところ、晶を当てにして仕事を投げてしまう後輩社員が晶に意見を求められたり仕事を任されやる気を出していくくだり、晶が九十九に意見するのに触発され後輩社員が九十九に意見し始めるシーン、晶と朱里が語り合い「人生は誰のものか」考えるシーンなど、リアルで心に沁みる名シーンが多い。新垣結衣、松田龍平、菊地凛子、黒木華のイメージを脱皮する熱演も見事。