かずぽん

八つ墓村のかずぽんのレビュー・感想・評価

八つ墓村(1978年製作のドラマ)
4.0
【古谷一行の金田一耕助】

(1978年・日本・テレビドラマ・1話55分全5話)
監督:池広一夫
原作:横溝正史『八つ墓村』

ふとした思い付きで、金田一耕助を演じた役者の見比べを計画。
「八つ墓村」に限っての比較ではあるけれど、劇場版(渥美清が金田一を演じた)と本作の比較だけでも全く趣の違う金田一を楽しんだ。因みに、「八つ墓村」には石坂浩二版がないということを知った。映像化された横溝作品の中では『犬神家の一族』に次いで多いというのに、これはどういった理由からだろうか。

戦国時代にこの地に逃げ延びて来た落ち武者8人。彼らは村人たちによって惨殺され、死に際に「七世まで祟ってやる」と呪詛のことばを残した。恐れた村人たちが落ち武者たちの遺体を手厚く葬るとともに、村の守り神とした。それが「八つ墓村」と「八つ墓明神」の由来である。

本作の舞台は戦後間もない頃で、主人公・寺田辰弥(荻島真一)は、ヤミ物資の売人。行きつけの食堂の主人から「ラジオで寺田辰弥を探していた」と聞き、諏訪弁護士(内田朝雄)の元を訪ねる。ここで辰弥を確認に来た祖父が持病の薬をのんで死亡するのが第一の殺人事件。第二の殺人事件は、辰弥が跡を継ぐ八つ墓村の田治見家で起き、殺されたのは辰弥の兄・久弥(中村敦夫)だった。
本作でも気が狂って村人たちを大量虐殺した田治見要蔵を、中村敦夫が一人二役で演じている。
山崎努が演じた要蔵に比べると狂気が物足りない上に、昼間のお祭り会場に現れるものだから、頭部につけた懐中電灯も昼行燈のごとく役立たずであるし、滑稽でもあった。

本作では、落ち武者の祟りはあくまでも言い伝え程度の役割であり、連続殺人の動機は、田治見家の財産狙いと、要蔵に家族を惨殺されたことへの復讐だった。
渥美清版との相違点はいくつかあり、まず、鍾乳洞へと続く入り口が違うし、渥美版には出て来ない「屏風」が、辰弥の母と本当の父親の秘密を解くヒントになっていた。
驚きの設定では、分家の西屋の森美也子(鰐淵晴子)が首謀者ではなく、もう一人犯人がいたことだ。更にその上をいく驚きは、事件解決後に新聞の記事によってもたらされる。
台風が襲った八つ墓村は、刑部川の氾濫により鍾乳洞ごと濁流に押し流されて消滅し、そこから辰弥の水死体が発見されたのだ。
美也子と辰弥の経緯を知らない金田一と日和警部(長門勇)は、「やっぱり祟りかなぁ」と暢気な台詞であるが、観客は劇中の美也子と辰弥の会話を聞いているので、「欲深いことよ…」と残念な気持ちになってしまう。
本作での金田一耕助は、何故か気が向いて(八つ墓村の名前に惹かれて)フラっと立ち寄ったことになっている。演じている古谷一行は、「推理や証拠集めに手腕を発揮するも事件を未然に防ぐことは出来ない。」という、安定の金田一のイメージだった。(笑)
長門勇の日和警部は、彼が発する「おえりゃあせんのう」という岡山弁と相俟って、日和警部の“ひとの好さ”がよく表れていると思う。
また、本作での工藤巡査(江幡高志)と警部との掛け合いも気持ちを和ませてくれる。
全5話と長尺ではあるけれど、なかなか面白かった。
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