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マインドハンター シーズン1のわにのレビュー・感想・評価

マインドハンター シーズン1(2017年製作のドラマ)
4.5
なんだろう、全くまだ何も終わってないから、ホールデンと同様「この先どうなるんだろう」という興味だけで引き込まれていった感じ。話が大きく動き始めるのはだいたい8話目くらいからなのに、ずっと引き込まれていく。
とにかく音楽の使い方はすごいとしか言いようがない。アンビエントの使い方がここまで「正しい」ものはなかなかないと思うし、一方でポップミュージックに関しては”
シリアルキラー”ものなのに、2話目にして早々にTalkingheadsの『Psycho Killer』を使ってしまうところとかすごくチャーミングにも思う。

テーマとしては「ミイラ取りがミイラ」的な、つまりはシリアルキラーの精神世界に入っていこうとするほどに、一部では彼らに同化し、徐々にプライベートにも浸食していく。これって、まさに現代の「アイデンティティ・ポリティクス」とかなり近い構造があるのではないでしょうか。ある意味、マイノリティに「なりきって」不条理に立ち向かおうとする。その「なりきる」過程で、異なる人種・国籍・ジェンダー・セクシャリティー・宗教に入り込もうとするがゆえに、自分の今いる場所との相違点に違和感を覚え、逆に差別的行動に走ってしまう現象。もしくは、「アイデンティティ」の側には立つことができるけど、経済的領域も含む「マイノリティ」の側に立つことが考えられなくなる現象。この二つがホールデンの1話目と10話目を比較したときに、明らかに失われているものがある。
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