タケオ

マインドハンター シーズン2のタケオのレビュー・感想・評価

マインドハンター シーズン2(2018年製作のドラマ)
4.2
 FBI行動科学課の捜査官たちが、シリアル・キラーたちとの対話を元に「犯罪者プロファイリング」を確立しようと奔走する姿を描いた『マインドハンター』のシーズン2。シリアル・キラーたちとの「対話」に物語の重点が置かれていたシーズン1とは対照的に、シーズン2では主人公たちの「ドラマ」に物語の重点が置かれている。
 「犯罪プロファイリング」こそ少しずつ形にはなってきたものの、シリアル・キラーたちとの交流のせいで捜査官たちは心身ともに崩壊寸前。前シーズンのラストの一件で、ホールデン(ジョナサン・グロフ)はパニック発作に苦しむように。相棒のビル(ホルト・マッキャラニー)は家庭崩壊の危機に直面し、そしてウェンディ(アナ・トーヴ)も、ジェンダーの壁に活躍を阻まれ苦悩する。しかしそんな中、彼らを試すかのようにアトランタで連続児童失踪事件が発生。ホールデンたちは事件解決のために全力を尽くすが、犯人は狡猾極まりないやり方で捜査を撹乱していく——。
 シーズン2で行動科学科の捜査官たちは連続児童失踪事件の犯人を追い詰めようと奔走するが、アトランタの「人種差別」の壁が彼らの捜査を阻む。難航する捜査に苛立ちを募らせ、少しずつ傲慢さをのぞかせるようになるホールデン。狂っているのは凶行を繰り返すシリアル・キラーか、それとも、シリアル・キラーを生み出してしまう社会の歪んだ構造そのものか?そもそも、自分たちとシリアル・キラーの境界線はどこにあるのか?「正気」と「狂気」の狭間で、捜査官たちは終始徹底的に引き裂かれることとなる。
 そして物語中盤では、遂に「シリアル・キラー界のキング」ことチャールズ・マンソンが登場。演じるのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19年)でもマンソン役を務めていたデイモン・ヘリマン。「支配欲だけがやたらと強い見栄っ張りのバカ」として演出されているが、肝心の供述ではイカれているようでいて、実は割とマトモなことも言っているところがミソだ。どんな話が聞けるのかと期待していたホールデンはガッカリするが、「ファミリー」を支配していたマンソンを前に、家庭問題を抱えるビルは冷静ではいられない。敵意を剥き出しにするビルを、「悪魔が必要なのはわかるけど、俺の中に自分を見て八つ当たりするのはよせよ」とマンソンが諭す姿はなかなか滑稽だが、さり気なく本質を突いてくるあたりが如何にもマンソンらしい。デイモン・ヘリマンのなりきりっぷりも本当に素晴らしく、できるならもう2~3話ぐらい彼の活躍を見ていたかったほどだ。
 苦〜い余韻とともに『マインドハンター』のシーズン2は幕を下ろしたが、まだまだ明かされていない謎が沢山ある。何よりも、遂に本格的に活動を開始した「BTKキラー」ことデニス・レイダー(ソニー・バリセンティ)の動向も気になるところだ。時期から考えると、そろそろテッド・バンディが登場してもおかしくないだろう。かなり企画が難航しているとのことだが、是非シーズン3も制作してほしいものである。
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