新木

全裸監督 シーズン2の新木のネタバレレビュー・内容・結末

全裸監督 シーズン2(2021年製作のドラマ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

アニメ以外の日本のNetflix作品として唯一(と言っていいほど)気を吐いてる気がする『全裸監督』。しかしその盛り上がりは国内、広く取ってアジアの一部の国までにしか拡がってないように思える。6/26時点の各国のNetflixランキングを見れば、アメリカやイギリスなどの欧米諸国ではトップ10にもランクインしておらず、お隣の韓国にも見向きもされていない状況。

ただそのことと作品の面白さは比例しない。とは思うのだが、シーズン2の内容を見ても、海外の方に勧めたいと思うほどの出来でないのが正直のところだ。シーズン1に増して、いたるところでセックスシーンがあるような印象も受け(元AKBの増田有華がふつうに濡れ場してて驚き)、個人的にそういうものをそこまで求めていなかったのでなんだかなと。
ややこしい問いではあるが、村西とおるの激動な半生を通して、結局なにを伝えたいのかが不明瞭なのだ。単純に「死にたい時は下を見ろ、おれがいる」的なところなのか。その態度としてヤクザから逃げ回り、周りからの信頼を次第に失っていく監督の姿を見せられても、どんぐりの背比べというか、あまり説得力はない。もっと正面切って、もがき闘う感じがこのシーズン2ではあまり見られないのが残念だった。トシや川田さんや三田村のほうがよっぽど闘っていた(ベイブリッジの撮影ができていたならそのへんはもうすこし感じ取れたのかもしれないが)。まだ黒木香を超えるヒロインを登場させることができなかったことも盛り上がりに欠けた要因のひとつであった。
そのうえでもっと描いてほしかったのは「村西とおるがなぜそこまで生き延びたいか」だ。シーズン1でその生に対する渇望的な話があったかはあまり覚えてないのだが、シーズン2だけ見た段階では、その欲望の出自というものがわかりにくい。人も金もない状況になって、村西はなにに希望を見出して生きることができたのか。そこをちゃんと描かないとただでさえ、2021年現在とは価値観の大きく違う1990年代のポルノ業界。視聴者も消化不良に終わってしまうのは必然だ。

ポルノ業界の変遷以外で、2の見どころとしては衛星放送とヤクザの軸だろう。特に衛星放送は今回のメインビジュアルで山田さんが宇宙服(頭だけ)を着てたこともあり、話の中心にもなってくる(あまり良いビジュアルとは思えなかったが)。放映を巡って、会社も自身も崩壊していくなか、必死で生きていこうとする姿、特に新宿あたりの高架下のトンネルでモノを売ってるときの乃木真梨子と話してるシーンは胸に迫るものがある。

一方で映像のクオリティはとてもきれいで、話の展開もしっかりしているので(ポルノというテーマであることを除けば)気楽に見やすいと思います。

その他下記鑑賞メモです。
岨手由貴子監督が脚本参加してるじゃないですか/美術や通行人の衣装まで細部にわたり当時の空気感を出せていたのは見事/裏ビデオを出すことの意味が現代の若者に伝わるか。ネットには無修正ものなんて当たり前のように落ちているので/コムと経理の人が金を持ち逃げする流れもだいぶ唐突/玉山鉄二のキャラが今回やばい/最終話のED曲がボブディラン「ライク・ア・ローリング・ストーン」な件/ラストの渋谷スクランブル交差点で吉本芸人出しすぎて萎え/黒木香が飛び降りるシーンはワンショットで観たかった
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