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全裸監督 シーズン2のjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

全裸監督 シーズン2(2021年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

すこしまえに、
渋谷の駅前ビルに
『上を見ろ、星がある。』という
黒幕に白字のどでかい広告が
貼られており、おや?と思って
よくみると『下を見ろ、』の文字。

見下げるとビルの下部(人々が歩くハチ公前交差点)に『俺がいる。』

すごい視線誘導が見事でまんまとハマってしまった。端の方に小さくNetflixの文字があり初めて全裸監督の広告だとわかった。
かなり攻めたつくりの広告だと思うけどすんげーーよかったの。

なにより元気付けられた。
辛くなったら下を見ろ、俺がいる!

シーズン1で頂点に上り詰め、
シーズン2でどん底まで落下する。
全裸監督はギャング映画の伝統的なプロットをしっかりと踏襲してて素晴らしい。
必ずつきまとうものの、映画の尺ですら少し尻すぼみになる栄枯盛衰を『人間関係崩壊のドラマ』という点にフォーカスすることで高いテンションで描き切った。

なぜ村西とおるは落下したのか?黒木香が言う『そんなの決まってます。あのひとが自分のことをAVの帝王だと思わなくなったからですわ。』という言葉が何気に凄い深い。
成功のあまり大望を抱き、周囲の支えてくれてた人間関係を次々蔑ろにしていく村西だけど、そもそもなんでそこまで夢を見たのか?
黒木香との新作を取る、取らない、の話にも関わる部分だが、すべては自分に自信がなかったからなのではないか?あの傑作は偶然の産物で、色んなタイミングが重なって出来たものだから自分の力では無かった…そう言うプレッシャーに押しつぶされた結果、彼はビジネスとしてのポルノに夢を見るようになってしまった、という事と受け取りました。

これがそのまま男女関係の
暗喩にもなっているのが秀逸。
そもそもの発端は、奥さんが宅配業者と不貞をしていたことが発覚し、自分の『男として』の部分の機能不信が根底にあり、そこから逃避するための『人類みなエロを求めてる』という発想。
それ自体は正しく、村西のエネルギーは人々を魅了するようになるけれど、
根底にあった自分の機能不信に対する恐怖。男としての魅力に欠ける存在なのでは無いか?という恐怖が黒木という最高の女性と巡り合って、さらに自分が生み出してしまった事で再び顔を表したということではないでしょうか。
彼女にとってしてみれば、彼との行為、作品は2人で生み出した芸術であり、そのエネルギーは村西に充分あるように信じてるけど、
村西は口では色々言いながらも、内心でそのセックスを最高の偶発物としてしか捉えられてなかった。
そこから崩壊が始まってる、という意味が黒木香の言葉なのだと思う。

その根本にシーズン1からあった傷口がどんどん膿んでくる過程を見せられてるようで苦しくて、
でもセックスのみならず人と人とのコミュニケーションを偶発物ではなく、つながりなのだと気付くまでに至る終盤のストーリー展開がより壮絶で泣けてきました。
よりシーズン1のあの無邪気な明るさが輝いて見える構成は、まさに青春でありギャングドラマ!
ト、トシィ…!!

見事なストーリーテリング。
色々書いたけど、結局クズがクズのまま突き抜ける物語は単純にすきすぎる。

実際は、黒木香はもっとどん底に追い込まれたのだろうな〜…とは思うものの、彼女を引き立てて突き放した村西とおるの所業を醜くしっかりと見せているので実在の人物たちをベースにした物語としてはかなり誠実な部類だと思う…。

ヤクザたちがどう関わるのか?とイマイチ脚本的にピンと来なかったけど、ラストにトシと組長の決着があってなるほど…となった。
昭和史についてのドラマでもあるしなぁ…ヤクザと警察は必須だよねぇ。

PS、竹内まりやエロくて良かった。
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