このレビューはネタバレを含みます
ゴミ清掃員として働く主人公の慶介。
看護士のハナ。2人の共通点は好きな人に貢ぐこと。
慶介はリストカットを繰り返す彼女に。
ハナは売れないバンドマンの彼氏に。
2人が誰にも理解してもらえない “恋人に貢ぐ行為” は私もあまり理解が出来ない。
(ちなみに「貢いでいるわけではない」というセリフがあるので、彼らにとってそれは貢ぎでは無いのだろうが…)
家族とうまく行かず家を出て、ようやく手に入れた“自分を必要としてくれる人“
その人の笑顔を見られるのなら…
傷つき苦しみながらも懸命に尽くす2人の姿、強さと脆さのバランスが崩れていく様に胸が苦しくなる。
壊れそうで小さな両手を握り締めたくなる。
いつでも口角に力を入れて笑顔でいようとする慶介は健気で守ってあげたくなる。
清掃業者で働く慶介。
仕事に不満はつきものだけれど、彼女の笑顔を守れるならと懸命に働く。
会社で自転車を壊された慶介。
おそらく誰かからの嫌がらせだ。
その自転車のせいで、小さな子供を怪我させ高額な慰謝料を払うことになった。
一方彼女の美也は、ようやく見つけたアルバイト先でも 人間関係が上手くいかず慶介に泣きながら辛さを訴える。
「やめようバイト。大丈夫お金なら。」と彼女に伝える声はとても優しい。
しかし、彼女を抱きしめながらカレンダーの返済日を見る目からは『これからどうしよう…』そんな気持ちが伝わってくる。
セリフはなくとも、目の動きから思いが伝わる圭さんの演技力。
昔から人の心を動かす演技をしている。
お金を借りようと実家を訪れるも、母親や兄からの心ない言葉に反発し家を飛び出てきた慶介。
彼氏に暴力を振るわれたハナ。
二人は心の傷を癒すために、ホテルに行く。
激しく抱き合う二人だが、その行為から生まれるのは虚無感だけ。
若き日の作品でもかなりの確率でベッドシーンがある田中圭。
なんでだろう…ありがたいけれど。
結果的にお金の工面がうまく行かなかったことを美也に話し責められる慶介。
そして、また美也がリストカット・・・
血を見るのが苦手な慶介が彼女の血を必死に止めようとする姿は切なくて、苦しさ、悲しさの末に慶介が至った行為。
そして自分が彼女に向けてきた愛の答えがわかった時の表情。
「何でもない」と言いながらボロボロと流れる涙。
これまで口角に力をいれてずっと我慢していた思いが堰を切って溢れ出すような悲しい涙に、こちらも涙腺が崩壊した。
決して明るい作品ではなかったけれど、ほんの少し前を向いて進む姿が見られるラストシーン。
彼の存在意義が見出された最後の職場でのエピソードはよかった。
ゴミ収集車の中で空をみて風に吹かれる慶介はどこか誇らしげで清々しい顔をしていた。前髪が風で上がって男らしいデコだしヘアーになるところが…なんとも素敵なの。
ハナさんとの最後のシーン。
空を見上げて「無人島へはいきたくないな」と言った後の笑顔の破壊力。
慶介に幸あれ。心からそう思った。
この作品は空を仰ぐ田中圭がたくさん見られた作品でもあった。
特に消費者金融の前で空を見上げる慶介の姿は儚くも美しい。
ネット画像でなんども目にしていたお顔がこの作品のものだと分かった瞬間の清々しさ。
国宝級と称される田中圭の横顔の中でもこのお顔はトップレベルに好きなお顔だ(画像を貼れないことが歯痒い)
ヤングシナリオ大賞に携わったスタッフの方々に田中圭を選んでくださった事に感謝の意を唱えたい。
内容的に地上波では難しいのかとも思うけれど、円盤化でも!
みたい方にとどく未来が待っていますように。