2015年の『フォースの覚醒』を皮切りに、ディズニーの目玉商品となる筈だったスター・ウォーズ。ところが5年後には同じディズニー傘下のMCUに何も敵わないところまで落ちぶれた。『スカイウィーカーの夜明け』は『エンドゲーム』に、クオリティーや満足度、興行収入、全てにおいて完敗。デイヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスもライアン・ジョンソンも去り、ケヴィン・ファイギがスター・ウォーズを仕切る噂まで流れた。ちなみにこの『マンダロリアン』もジョン・ファヴローがショーランナー、タイカ・ワイティティが最終回の監督という侵食ぶり。2022年の新作まで2年しかないが、立ち直れないほどの傷を負ったのではないか、と心配してしまう(と同時に、この心配はある程度映画情報に詳しい者でないと共感出来ないんだろうな、とも思う)。
そんな惨状の中で燦然と立ち上がった『マンダロリアン』は、数年前から続いて終わる気配のないピーク・TVの時代だからこそ輝いた。次々と生まれるテレビドラマの傑作は、クオリティーは上がり続け、中には注意深く見ないと面白さが半減してしまうものも多い(スターチャンネルで絶賛放送中の『ウォッチメン』とか)。勿論それらが素晴らしいのは言うまでもないが、それに抗うかのようにド直球な冒険活劇をぶつけ、結果として多くの支持を獲得した。多くの西部劇や映画、『子連れ狼』的な物語の根幹、あらゆる娯楽のオマージュを引っさげた正統派SF。これはアメリカン・ニューシネマの陰鬱な雰囲気の中で『新たなる希望』が生まれた構造と似ている、と思うのは邪推だろうか。いやいや、本作が誰もが入り口に見れる作品として機能しているのは偶然ではないだろう。それぐらいストレートのカッコよさ、面白さ。忘れかけていたものがここにはある。
3話(神回!)、7話の監督をしたデボラ・チョウは絶対に離すなよ。やべぇ才能の持ち主だ。オビ=ワン・ケノービのスピンオフにも参加予定らしい。