素晴らしい。前シーズンの『アス』的な“上と下”の構図を引き継ぎつつ、男性優位社会や階級に対する批判的眼差しをより濃くしている。
暴力の描き方も目を引いた。まっさきに暴力の犠牲者となるのは、弱い立場の者だと徹底的に示す描写が際立つ。それと対比させるように、人ではないナニカになっても国王は生かされる。死してなお権力を持ち、利用価値がある強者だから。
利用価値といえば、病人を殺して兵士に仕立てあげるシーンは人ごとに思えなかった。相模原障害者施設殺傷事件を経た後だと、なおさら。病人を使う理由なんて怒りしかなかった。フィクションとわかっていても、反射的に「ふざけんな」と呟いたのはここだけの話。
キム・へジュン演じる王妃の顛末も心に響いた。王妃も権力を貪欲に求めるんだけど、背景を知ると悲哀を感じる。劇中で女性は文字通り“産む機械”扱い。おこないは正しくなくても、私からすると王妃も男性優位社会の犠牲者に見えた。目の前で父親が女性を踏みつけにするの見たら、そりゃあね。
社会性とエンタメを高いレベルで共立させたドラマとしてはもちろん、ドラマを含めたあらゆる表現の中でも『キングダム』はハイスコアな作品。キム・ウニが脚本の作品はどれもおもしろく観てきたけれど、いまのところ『キングダム』が一番かも。