Larx0517

ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ シーズン1のLarx0517のレビュー・感想・評価

4.2
子供だましでない、オトナのための、製作者側の本気度がうかがえるドラマ。
本気度は俳優陣を見れば一目瞭然。
人気取りの美男美女のスターや派手なアクションは必要ない。
作品の質に自信があるから。
『Mr.&Mrs.スミス』ではない。

レトロな時代設定の中、任務がテンポよく展開する。そこに被る音楽もシーンとシンクロしながら、メリハリがあり邪魔をしない。
そこに2人の人間の背景と感情を効果的に小出しにすることで、ドラマを立体的に構築してゆく。
ただのスパイものではなく、偽装夫婦で子供を3人ももうけている。
かといって愛し合っている訳ではなく、あくまで任務。少なくとも当初は。
ロシア側スパイというひねりも面白い。
向かいの一家の夫はFBI。
これだけ揃えて、面白くなければ誇大広告で、JAROに訴えられる。

一見典型的な「平凡で退屈な」ハッピーアメリカンファミリーのシーンを挟むことで、逆に裏の顔が強調される。
さらに、というべきか、マシュー・リスが典型的なイケメンでないところが、現実味を与えて、ドラマを地に足をつけたものにしている。もちろん地に足がついた彼の演技は言うまでもない。
(任務のためだけのはずの)妻、子供たち、任務、祖国、信条の間で揺らぐ心情を瞳だけで表現する。
「イケてない」カツラの変装も愛嬌。

個人的にケリー・ラッセルは大学生役『フェリシティの青春』から見ているが、クリーンな彼女が他人を殴るイメージがなかったので、新鮮な驚き。しかもいきなり冒頭は娼婦。
スパイでも、任務に徹する非情な優等生(過ぎる)のは、うまいキャスティング。
1話で自分にコーヒーを入れながら、マシュー・リスが差し出したカップに目もくれずに立ち去るところは笑える。
見過ごしそうな、細かいディテールまで手を抜かない。
「(演技の)神は細部に宿る」
Larx0517

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