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浮世の画家のdarumaのレビュー・感想・評価

浮世の画家(2019年製作のドラマ)
4.0
よかった…!さすがカズオ・イシグロ、さすがNHK。あの静謐さの中にある真を見事に表していました。渡辺謙さんはそれほど好きって訳じゃないのですが、物凄くベストキャスティング。

1時間くらい経過したあたりで、おおっ!凄いギミックと思ったのだけれど(自分が思っているようには他人からは見えていない)、そこから30分がさらに凄かった…
最初は戦争というどうしようもない事に巻き込まれていく様なのかと思ったら、そうではなかった。

信じた事が正当では無かったとき、自分自身が全否定される感じ、物凄く分かる気がした。途中までは先日観た映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」の女性記者を思い出していたのだけれど(そういえばマルクス繋がり)、もっと奥が深かった。でも突き詰めると同じかもしれない。歴史とはそういうものなのか。

ラストの生命の誕生が救われる描写だなと思った。輪廻というか…
原作と同じかわからないけれど、カズオ・イシグロは晩年の描き方がとても良いイメージがあるので、うまく受けている(引き継いだ脚本なのだ)と思う。
藤本有紀さん、朝ドラ100でちりとてちん(未見)が絶賛されていて初めて認識しましたが、次回の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」がとても楽しみです。

キャストも凄かった…奥田瑛二さんや萩原聖人さんが出てきた時はテンション上がりました!(さすが渡辺謙さん主演)
渡辺謙さんの青年期を中村蒼さん(ここか!エールは^^)、奥田瑛二さんの青年期を大東駿介さん(実は最後まで同一人物とは気づかず…また思わず巻き戻してしまった、めっちゃ説明されてたのだけど理解できてなかった)というのもツボを押さえてました。
前野朋哉さんも佐藤隆太さんも適任すぎる役(イメージ通り)
渡辺大知くんがおおっ!(ぱっと見わからず、喋って気づいた)って感じで、ガヤ系が合ってるのか?と思ったけど(いや合ってたけど!)、演出がまれの方だったんですね…!
あと、寺田心くん上手すぎでした。

これも録画消化シリーズだけど、ほんと残しておいてよかった。
(録画したのはカズオ・イシグロがきっかけです)

個人的にカズオ・イシグロはわたしを離さないでが出たばかりの頃にハマり、その後いつか読もう読もうと思っていたけれどずっと間が空いていて、わりと近年、日の名残りを読みました。そして本作を最後まで観て、そういえば!これも原作読みかけた事があった…と気づいた(図書館で借りて読み切れず返却していた)。確かほんと冒頭、孫と映画を観に行くあたりで挫折していたのですが、映像で最後まで知れてよかった。
カズオ・イシグロは読破したい作家のひとりです。
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