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人間の証明(2017年版)のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

人間の証明(2017年版)(2017年製作のドラマ)
4.7
 昭和49年、東京。ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で、一人のみすぼらしい身なりの黒人青年が息絶える。胸には深々と突き刺さるナイフ。頬には一筋の涙が伝っていた。
 現場に駆け付けた麹町東署の棟居弘一良(藤原竜也)は、本庁捜査一課の横渡伸介(緒形直人)とともに捜査を開始。青年が向かおうとしていた最上階で聞き込みを始める。
 その日、最上階では高名な美容家の八杉恭子(鈴木京香)による盛大なレセプションパーティーが開かれていた。大勢のマスコミや招待客がひしめき、大物議員の夫(中原丈雄)と一人息子(堀井新太)とともにスポットライトを浴びる恭子は、理想の妻、理想の母として日本中の憧れを集めていた。
 殺された青年の名前はパスポートからジョニー・ヘイワードと判明する。しかし、恭子のパーティー客に該当する人物はいなかった。
 その後の捜査で、ジョニーはニューヨークのスラム街育ちであること、片言ながら日本語が話せたこと、そして死の間際「ストウハ」という謎の言葉を残していたことが分かるが…。
森村誠一の傑作ミステリー小説の3度目の映像化。角川映画版での松田優作演じる棟居刑事は、協同捜査したニューヨーク市警の刑事が自分の父親を殺したアメリカ軍兵士だと知り憎悪するなど戦争の負の部分が影響している部分があった。藤原竜也演じる棟居刑事は、アメリカ軍兵士に殴られた傷つけられた父親を見捨てて自分を置いて出ていった母や父親を傷つけたアメリカ軍兵士を憎んでいて、人間は自分の保身のために平気で人を傷つける、だから人間を信じないし犯罪者が憎いという鬼刑事。
犯罪を憎んで暴走しがちで非情な捜査に走る棟居に、「人間は善と悪が入り交じった矛盾した存在。だから人間を信じなきゃ捜査出来ない」と教える横渡刑事の指導することで、人間対人間として取り調べしたり捜査出来るように棟居刑事が成長していく成長物語。ジョニー殺しと轢き逃げ事件と第3の事件が繋がり、少しずつ謎が解けていく緻密なミステリー。犯人のジョニーを生むまでの半生を通して浮かび上がる、戦後必死に生きてきた女性そして母の業、母の愛を求める息子の切なさ、現代でも共感出来る傑作ヒューマンミステリードラマ。
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